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映画・演劇のレビュー

『愛 アムール』

2013-03-23 20:22:50 | 映画
 カンヌ映画祭で前作『白いリボン』に続いてパルム・ドール(グランプリだ!)を受賞したミヒャエル・ハネケ監督作品。なんと今年のアカデミー賞でも外国語映画賞だけではなく、作品賞にもノミネートされていたけど、あれはなぜなんだろうか。アメリカのアカデミー賞って英語の映画しか、作品賞にならなかったのではないか。これはフランス語だし、オーストリア映画だ。いいのかなぁ。そう言えば、今思い出したけど、昨年はフランス映画の『アーティスト』が作品賞ほか何部門か受賞していたから、最近は外国語でもいいのかぁ。としても、こんな地味で暗いミニシアター系の映画が、アカデミー賞候補である。時代は変わったものだ。

 『ファニーゲーム』で日本に紹介されてから、公開された全作品(DVD公開も含む)を見ている。そんなにも大好きだったハネケなのだが、前作といい、本作といい、なんか以前のとんでもない世界から、なんだかとてもリアリズムで、重厚な文芸映画に転身してしまった。僕はなんかなじめない。彼は、巨匠ではなく、ただの鬼才であって欲しい。今回も確かに怖い話ではある。だが、それ以上にあまりに重くて、しんどい。いい映画であることは誰もが認めるところだ。でも、好きか、どうか、と言われると、ちょっとしんどい、としか、言いようがない。

 老いと死をテーマにして、80を過ぎた老人が、突然、動けなくなった妻の介護をする、という話だ。妻の意志を汲んで自宅で、世話をする。どんどん彼女の状況は酷くなり、とても自分ひとりではどうしようもなくなる。だが、介護師を雇っても、なかなかうまくいかない。やがて、何から何まで自分がすることになる。そんな主人公の老人をなんとジャン=ルイ・トランティニャンが演じる。あの往年の名作『男と女』の「男」が、こんな「おじいさん」になってしまい、かつての面影はない。でも、よく見ると確かにトランティニャンだ。(表記は以前はトランティニアンじゃなかったか?)とても悲惨で見ていられない。状況はどんどん悪化していく。目を覆いたくなる。2時間9分、辛くて見ていられない。

 ただそれだけの話である。そこから目をそむけるな、という映画だ。だから、最後まで頑張って見た。見終えて、がっくりした。カタルシス・ゼロである。当たり前の話だが、それでも、疲れているときには勧めない。しんどすぎる。さっきも書いたが、これは確かに傑作である。でも、なぁ、である。

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