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映画・演劇のレビュー

『ブレット・トレイン』

2022-09-03 10:39:05 | 映画

伊坂幸太郎の原作『マリアビートル』は素晴らしい作品だ。彼の代表作と言ってもいいだろう。ドキドキが止まらない。長い小説なのに、途中で止められない。一気に読んでしまった。東京から盛岡まで東北新幹線に乗り合わせた殺し屋たち(もちろんそれはたまたま、ではない)が繰り広げるお話の仕掛けも見事だ。(まぁ、そういうのはいつも通りなのだけど)そんなあの傑作小説を映画化したこの作品は原作とはまるで別物。だから比較はナンセンス。

あの小説をモチーフにしてそれをハリウッドのコメディ。アクション娯楽大作に仕上げた。だから、この呆れるほどにバカバカしい映画を楽しめ。それだけ。突っ込みどころは満開。すべてがそう。アホらしい映画だ。でも、楽しい。アホを作り手が全力で楽しみながら全力で作った。だから、僕たちはそれを楽しめる。中途半端なら乗れないけど、ここまでされるとすべてがOK。わざとこういう勘違い日本を造形した。リアルではないのがこの場合はいい。

ブラッド・ピットがこんな軽くて、コミカルな役を演じるなんて初めてのことではないか。さらには、終盤の米原から乗り込んでくるという事前の評判だった真田広之がなんと冒頭から登場し、さらには列車に乗り込んできてからは主人公並みの活躍を見せるのもうれしい。

この新幹線ではなく、なんだかよくわからないこの特別特急弾丸列車は、東京から京都まで、こだま並みによく止まる。途中の停車駅は品川、新横浜、静岡、浜松、名古屋、米原。クライマックスの京都駅では、ホームにヤクザしかいない。京都から先、大阪のはずなのだが、ラストのクラッシュした場所はどこなのだろうか。あんなに走ったのにまだ京都府から出ていないみたいだ。警察は京都府警のパトカーだった。高槻なんてあっという間だと思うけど。

派手なアクションだけではなく、お話の妙を楽しむ。だから伊坂原作なのだ。でも、それを使いながら、原作とはまるで違う世界を提示する。そのシュールでファンタスティックな日本はきっと外国人には楽しいはずだ。もちろん日本人である僕たちも楽しめる。


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