
上下2巻でそれぞれ400ページ越えの大作である。主人公の如月空子10歳からスタートして、4歳まで遡りながらのクロニクル。140ページで20歳。250ページで35歳。ここから第2章。「上」はこのふたつの章からなる。
人格を呼応、トレースして状況や集団に応じて変化させることを特技にして人生渡ってきた。そんな女の一代記。こんなディストア小説ありか。最初からテンポよくお話がサクサク進むけど、この先、どうなっていくのだろうか。まるで先が見えない。かなりドキドキして読み進めるが20歳のエピソードになってからつまらなくなった。
お話もここで停滞する。だけど実はここからが本題でそこまではプロローグだったのかもしれない。明人と付き合い始めた時、童貞で潔癖症の彼を都合の良いパートナーとして受け入れる。30人の男たちと恋愛して(もちろんセックスもして)もう新しい男はいいと思う。
彼女はさまざまな人格を使い分け、環境に順応して生きる。父親のいいなりで便利に使われて生きる母。面倒くさいペットのピョルコン。外国人はウエガイコクとシタガイコクに分断された世界で自分たちもまた格差社会に分断されていく。
さらにはその後の2章は15年後の35歳。タイトルの「世界」という概念がここから明らかになる。世界①②③を使い分けて生きる空子が描かれる。そして世界99はすべての世界を統べる。客観的な視点は神の視点か。おぞましい世界ではランチ1000円と3万円が常識の世界が同居する。それを当たり前と受け入れて何も考えない人たち。意識高い系の人たちはそれに問題を感じ議論するけど、行動はしない。明人と結婚して母のように奴隷のような人生を送っている空子。明人のセックスはペットのピョルコンに任せて彼女は家事道具に甘んじる。
ラロロリン人への差別はやがて彼らの人権を守るための保護政策から彼らへの偏見を助長し、やがては排除に至る。廃棄物処理(死体を再利用して作っていた)としてのピョルコンが明らかになり、ラロロリン人はピョルコンに改造されることを望む。
と、こんなふうに簡単なストーリーを書いてきて、そのあまりの目まぐるしさに眩暈がする。怒濤の429ページを経てここから下巻に突入。