
劇団ガンダムを見るのは初めてになる。舞台監督の塚本修さんたちガンダムフリークが結集して愛を込めて作り上げた世界を、たくさんの観客と共に楽しむイベント芝居。開場前のロビーからこのイベントは始まる。
今回は「深津篤史没後10年記念企画」と銘打った公演で、会場には深津さんの写真が飾られてある。だけどもちろんこれはしんみりとしたものではなく、深津さんを偲びながら、お祭り騒ぎ。きっと深津さんは苦笑しているだろう。ABプロがあり別キャスト、演出による公演。僕はAを見る。スタッフ、キャストは当日までのお楽しみ、らしい。ほんとにイベント企画って感じ。
オープニングアクトから楽しい。民族楽器研究家の谷本誠とその仲間たちによる演奏、さらにはわけのわからないガンダムヨガ教室と続く。
本編は短篇作品3本立て。深津篤史・作『緑の奴ら』の再演から始まる。(演出は岩橋貞典)深津さんが劇団ガンダムに書き下ろしたもの。戦場に色恋、というコンセプトでもちろんガンダム世界の一光景を想像する。いきなりシリアスな芝居となる。深津世界をガンダム世界に移植したらこんな感じになりました、って感じ。丁寧にある光景を切り取り、なんだか切ない。
だけど、本編はそこではない。空の驛舎の中村ケンシによる『はこぶね⭐︎ぶらんこ』がさらに切ないのだ。そこでは死者への哀悼がセンチメンタルに描かれる。ここまでやるのか、と思うくらいにストレートだ。だけどそれは背景がガンダム世界だから可能だったのだろう。もちろんそこには作者と深津さんの思い出が根底にある。ふたりのやり取りが描かれるところが泣かせる。芝居自体はガンダムなんて関係ない次元で展開するからこれは劇団ガンダムではなく、空の驛舎の芝居を見ているのではないか、と錯覚させる勢いだ。だけど大丈夫、最後にはちゃんとガンダムに戻ってくる。(演出は関川佑一)
こんな2本の後、高橋恵・作の作品だから、さらなるセンチメンタルかと、思ったら、タイトル通り実にバカバカしい活劇が展開する。これこそ劇団ガンダムって感じ。谷本誠・演出による『ヤンキー版ガンダム 哀だんじり編』である。イベント上演にふさわしいはしゃぎ振りで楽しい。高橋さんが自分も楽しんで書いている。ヤンキーたちの争いをガンダム世界で、というか岸和田世界で体現する。わけのわからないお祭り騒ぎがやはりなんだか切ない。
やはりこれは深津篤史追悼公演なのだな、と改めて思う。ウイングフィールドで初めて大阪にやって来た桃園会の芝居を見た。あれからどれだけの歳月が過ぎただろうか。深津さんの作品が好きだった。毎回欠かさず最期まで見てきた。そんなことを思い出す。
エンディングは再びみんなが出てきて客席も一体になり歌う。こんなもんがあってもいいと思う。そこには作り手の愛が溢れている。