
こんな小説をまだ20代前半の作者が書けるのかと感心した。単なる半グレグループによる抗争を描くエンタメではない。大阪グリ下から始まり、キタとミナミのふたつの抗争にヤクザや警察も絡んでくる壮大なドラマだ。
父親がコロナ禍で仕事を失いバイト生活を余儀なくされる高校生の椎名和彦。彼がたまたま知り合った男に誘われて、ミナミの半グレ組織を束ねるヤオに出会う。「俺たちはミナミの顔役や」と嘯く彼とその仲間たちと付き合う中、今まで知ることのなかったさまざまなヤバい人たちに出会う。拉致されていたところから逃げ出した少女凜を匿い、女たちを借金漬けにして沈ませるキタの半グレ組織、愚狼會と戦うことになる。愚狼會は格闘技ジムをしながら公開処刑、管理売春を行っている。椎名、ヤオたちは凜を取り戻し愚狼會を叩き壊そうとするが、、、
夜の大阪を舞台にするハイテンション活劇エンタメ小説である。凄いスピードでもの凄い人物が跋扈する400ページに及ぶ長篇。クライマックスであるはずの顔役と愚狼會の対決は期待ハズレ。お話がなんかあまりに簡単なところに収まってしまった。それまでの不気味なタッチからよくある活劇エンタメになってつまらない。16歳の椎名少年の地獄めぐりのはずが、最後では彼はお話の脇役になる。警察の介入もあまりに簡単すぎてリアリティはない。あれでは澤田ひとりの暴走でしかない。