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映画・演劇のレビュー

『アメリア 永遠の翼』

2010-12-03 21:29:54 | 映画
 女性飛行士として初の大西洋横断に成功したアメリア・イヤハート(ヒラリー・スワンク)の波瀾に富んだ生涯を描く映画。シネマスコープのスクリ-ン一杯に描かれる飛行シーンが美しい。大空を飛ぶ、という快感が美しい風景と共にしっかり描かれる。インドの女流監督ミラ・ナーイル作品。彼女ならではの視点を期待したのだが、そういう意味ではなんとも肩すかしの1作なのが残念。

 ストーリーに関しては別にどうってことない。事実をベースにしたさもありなん、というお決まりのサクセス・ストーリーだ。もちろん彼女の苦悩とか、夫(リチャード・ギア)との愛とかも、描かれる。だが、そこに何らかのテーマがあるわけではない。不況にあえぐ1930年代を背景にして、一陣の風のように駆け抜けた女性飛行機乗りの爽やかな人生の軌跡は、ラストの夢の世界一周飛行に向けて一気に収斂されていく。夢を実現させることを何よりも大事にして、結婚も本当はしたくなかった、とか。男女逆転の図式が提示されるのだが、ことさらそれを強調するわけではない。

 夢を追いかけて世界の空を飛ぶ妻の帰りを不安に駆られて待つ夫なんていう構図をリチャード・ギアにさせる。妻が浮気しても(お相手はユアン・マクレガー)耐えて自分の元に戻ってくるのをけなげに待つ、とか。それってなんだか変な感じだ。今までこういうタイプの映画はあまりなかったのではないか。しかもそれをとても自然に描いていく。ここにはわざとらしさや無理がないのだ。彼女の夢を支えるおおらかな男性というのでもない。強い女と弱い男というのでもない。とは言え、共感してるのではない。なんだかなぁ、と思う。彼女が自分の夢に邁進していく姿はなんだかとてもわがままでバカっぽい。それって、この映画の意図ではないだろう。どうして、こんな風になるのだろう。

 ラストはちょっとあっけないが、あれを殊更感動的に描かれてもたまらないから、あんな感じがベストかもしれない。だが、何が悪いというわけではないのだが、なんだか物足りないのも事実だ。そう言えば、ついこの間、同じように女性飛行機乗りを描いた(主人公は男性だったが)高橋恵さんの芝居を見ているが(虚空旅団『見送ル、背中』)夫婦愛の物語としては、あちらの方がずっと面白かった。



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