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映画・演劇のレビュー

演劇集団☆邂逅『薔薇の牢獄』

2022-07-18 09:21:54 | 演劇

今年3年振りで「大阪春の演劇まつり」が復活した。ただ、従来通りの形ではなく、『番外編』と銘打っての再開だ。参加劇団も7劇団。各劇団がそれぞれいつも通りの時期に公演を打つ。まずはそれだけでも大きな1歩だ。「お祭り」というスタイルには程遠いけど、いつもの集団がそれぞれ舞台に立つ。芝居が上演されるという事、ただそれだけでもうれしい。開会式や閉幕セレモニーはないけど、先日急遽、講評会が開催されることになった。前半参加の4劇団の講評会が無事行われた。芝居のお話を、作り手と観客が話し合うのって素敵だ、と改めて思う。

さて、本題に入る。そんな春演、この作品が後半戦の第1弾となる。邂逅としては3年ぶりの本公演だ。昨年末の『星の王子さま』+『水たまりの王子さま』があんなにも素晴らしかった邂逅が今回満を持して挑む新作だ。今回も、PT企画の和泉めぐみ、作演出による新作だ。邂逅らしい華やかで、でも、重いタッチの作品である。ヘンリー8世の暴挙が描かれる。晩年の彼の孤独。死神に導かれて彼のもとにやってくる死者たち。シェイクスピアのお芝居を思わせるタッチで描かれる堂々たる大作である。それをTー6(テシス)のような小空間で見せきる。小劇場演劇ならではの体験ができる。いつものようにミュージカル・スタイルでこの重くて暗いお話を8人のキャストを縦横に駆使してたった85分の作品として綴っていく。舞台美術も見事だ。タイトルにもある薔薇の牢獄の装置である。それを実に機能的に駆使した。いろんな意味で、とてもよく出来ている。エンタメ作品としても完成度は高い。

ただ、見終えてなんだかいささかもの足りないな、とも思う。その理由は明白だ。あまりにヘンリーを単純に描きすぎたからである。彼の苦悩が、その愚かな行為へと行きつく過程が、きちんと描き切れてないからこのお話に(主人公に)感情移入できない。表面的なドラマが薄っぺらに綴られるだけという印象を与える。ただの自業自得にしか思えないのだ。肝心の兄との相克もそうだ。そこが描けていないから、ヘンリーはただのバカ者になる。力作であるだけにそれってなんだか惜しいし、悔しい。

 


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