
青い鳥の芹川藍の作、演出、指導によるASOBOproject大阪公演『生きぬくだけで天晴れ!』。知り合いが出ているから見たのだが、とても刺激的な作品だった。19人のキャストがそれぞれとても生き生きと老齢期を生きている姿を見せてくれる。さまざまな人たちがこのプロジェクトには参加しているのだろう。だけどほとんどは初めて芝居をする人が多数ではないか。(昔、小劇場でよく見ていた人も参加しているが)そんな彼女たちがまるでプロのように見事に演じるのは等身大の自画像である。だから、リアルである種の切実さがある。それを生々しく描くのではなく優しいユーモアで包み込む。
だからこれはよくあるシニア演劇とは一線を画す。まるで夢の中にある「劇団 青い鳥」の芝居を見ている気分だった。昔ずっと見てきて1番大好きだった青い鳥の芝居が甦る。80年代にようやく青い鳥が大阪にもやって来た。あの日オレンジルームで初めて見た『いつかみた夏の思い出』は僕の生涯ベストの一作だろう。
そしてそれからは毎年の大阪公演が楽しみだった。やがて『青い実をたべた』くらいから老女を主人公にした芝居が始まった時、彼女たちが実年齢も老境に達してこれを舞台で再び演じるとどうなるのかと夢想した。あれからどれだけの歳月が過ぎたことか。
もちろん芹川さんたちも今では老境に達したが、彼女はここで自分と同世代の女性たちと一緒にリアルタイムの高齢者が演じる青い鳥の芝居を目指す。
オリジナルを叩き台にして、彼女たちの実感や体験を交えて新しい作品にする。エチュードで作品をみんなと作り上げる。ひとりひとりの想いが舞台化された。それは最後の19人の独白だけではない。それまでの短篇だってそう。みんなが感じていることが短い芝居となり演じられている。
開演前に役者たちは観客に手を振り、おしゃべりする。もうそこから芝居は始まっている。東大阪市文化創造館の多目的室という広い空間を自在に使い、客席と演者が一体になる。さらにはカーテンコールでの芹川さんのことばも含めて、すべてがひとつの作品として結実している。これは天晴れな芝居だ。