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映画・演劇のレビュー

演劇集団邂逅『飛鳥幻想 (天智・天武 最期の会話)』

2014-06-10 22:00:11 | 演劇
 彼女たちは、こういうミュージカルがしたかったのだ。ようやくその願いが叶った。もちろん、今までも手探りで、その可能性にチャレンジしてきた。さまざまなスタイルで挑戦してきた。その都度、その頑張りには拍手を送ってきた。でも、何かが足りない。よく、頑張っているけど、でも、物足りない。

 でも、ようやく今回はそうは思わない。大丈夫だ。これで十分に目的は達せられた。ふたりの男の、出会いと別れを、壮大なスケールで描く絵巻物だ。だが、話はとてもコンパクトに収められる。中大兄皇子とその弟である大海人皇子のお話である。固い絆で結ばれた二人が、どこかですれ違い、別々の道を歩まなくてはならなくなるまでの軌跡が、華やかな歌と踊りのミュージカルとして描かれていく。

 まるで宝塚歌劇を見ているような華やかさ。それこそが彼女たちのやりたかったことで、でも、どうしても、チープにならざるを得ないのは、仕方のないことだった。スケールの大きなお話をどれだけ華やかな衣装や装置を用意して見せても、そこには限りがある。宝塚にはならない。では、どうすれば、自分たちの世界としてそれを再現できるのか。

 一点豪華主義ではないけれども、ピンポイントで攻めるしかない。それは装置や衣装の問題ではない。お話の問題なのだ。3時間の大作に挑戦するわけにはいかない。それで、勝てるわけもない。では、どうするか。短編小説のようなお話を、1時間40分ほどの作品として、作り上げるのである。それは一昨年の『源氏物語』でも挑戦したことだ。それを今回はさらにブラッシュアップした。これだけの歌と踊りのシーンを用意しても大丈夫だ。100分以内に収まる。しかも、見せ場ははっきりしている。感動のポイントはサブタイトルにあるとおりだ。誰もが知っている「歴史もの」。それを自分たちなりのアレンジで見せていく。よく考えた。そして、コンパクトにまとめた。だから、成功したのだ。

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