前作『リチャード3世』に続くシェイクスピアシリーズ第3弾。今回も3部構成で3時間半の大作である。原作を活かしながらさらにその先をあるものを目指したくるみざわしんの台本を得て笠井友仁の演出は冴え渡る。
テキストを踏まえた前半は少し単調だが、そこから逸脱してくる後半が素晴らしい。父の亡霊と立ち向かい、母と向き合い、この狭い世界から外に出て行く。イギリスに送られるところからラストまで、まさかの展開で手に汗握る。ハムレットを演じた 高安美帆が素晴らしい。内向的で繊細。感情的にはならない。心を閉ざしながら真実を希求する誠実さが際立つ。
今回もまた、女性だけで演じられる芝居は高安だけでなく、他のキャストすべてにおいても個々の繊細な対応が彼女たちの演技からは見て取れる。敢えて男性キャストを廃して描くスタイルが今回も功を奏する。そこからは、人それぞれの抱える想いや傷みがきちんと伝わってくるのだ。デンマーク一国の内紛から始まったドラマは壮大なスケールの物語になる。