
郊外で暮らす四人家族のありふれた日常を描いていたのに、それがいつの間にか奇妙な異次元に迷い込んでいく。前半はかなり面白かった。息子の靴を洗うことに執着する母親。(靴なんか今時洗わないと思う)自分が仕事もしないでふらふらしていることを、近所の人に悟られないように、外出のサイクル、時間まで気にしている主人公。大学院生に見えるようにする、なんてかなり異常だ。「ありふれた」と書いたが、ちょっと考えるだけで、この家族は変である。しかし、このくらいの変さはどこの家庭にでもあるのではないか、と思わせる。
母親の呪縛から逃れられず、いい大人なのに、こそこそと女のところに通っては、それが母に知られないように秘密工作を続けている。
家を出て就職し、ひとり暮らしをしていた兄が、仕事をやめて帰って来る。家でごろごろしている。
後半になり、いきなり父親の耳から得体の知れないうんこのようなものが飛び出してくる。この「奇妙な異次元」というやつが、あまりに唐突過ぎて、その象徴性も分かり難く、感心しない。この小説の中では、日常と異常が陸続きになっている。
3編の短編集なのだが、3編は続編ではないが、微妙な差異はあるものの同じような家族の話であり、話としてもリンクしている。次の『ふるさと以外のことは知らない』も、母の話。家の鍵を誰にも渡さないで、家を完全に自分ひとりで管理する母親の話だ。家族は誰もそれに文句は言わない。母は買い物以外(家族が全員家を出た時間に行く)はいつも家にいる。ありそうで、ない。そんな話だ。
『市街地の家』は、2日ほど母が、祖母の見舞いのため家を空けてしまう。その間の父と自分だけの不安な日々を描く。これも考えるまでもなく、なんでもない話だ。しかし、いい大人が母がいないというだけで不安を感じるなんて、どうかしている。
とても歪で、変な小説である。素材としては面白いが、これだけではあまり納得しない。この作者が、ここからどこへとジャンプしてくれるのか、今後の展開が楽しみだ。
母親の呪縛から逃れられず、いい大人なのに、こそこそと女のところに通っては、それが母に知られないように秘密工作を続けている。
家を出て就職し、ひとり暮らしをしていた兄が、仕事をやめて帰って来る。家でごろごろしている。
後半になり、いきなり父親の耳から得体の知れないうんこのようなものが飛び出してくる。この「奇妙な異次元」というやつが、あまりに唐突過ぎて、その象徴性も分かり難く、感心しない。この小説の中では、日常と異常が陸続きになっている。
3編の短編集なのだが、3編は続編ではないが、微妙な差異はあるものの同じような家族の話であり、話としてもリンクしている。次の『ふるさと以外のことは知らない』も、母の話。家の鍵を誰にも渡さないで、家を完全に自分ひとりで管理する母親の話だ。家族は誰もそれに文句は言わない。母は買い物以外(家族が全員家を出た時間に行く)はいつも家にいる。ありそうで、ない。そんな話だ。
『市街地の家』は、2日ほど母が、祖母の見舞いのため家を空けてしまう。その間の父と自分だけの不安な日々を描く。これも考えるまでもなく、なんでもない話だ。しかし、いい大人が母がいないというだけで不安を感じるなんて、どうかしている。
とても歪で、変な小説である。素材としては面白いが、これだけではあまり納得しない。この作者が、ここからどこへとジャンプしてくれるのか、今後の展開が楽しみだ。