習慣HIROSE

映画・演劇のレビュー

『私の生涯で最も美しい1週間』

2006-12-12 20:58:50 | 映画
 『王の男』の感動から5分後にはもう、この映画を見ている。忙しいことだ。同じく韓国映画だが、こういうタイプのテクニックを駆使して、ソフィスティケートされた人間ドラマを作らせると韓国映画は、なぜかよく失敗する。もちろん韓国映画だからとは言わないが、今公開中の『サッドムービー』然りである。こういう群集劇は先日亡くなったロバート・アルトマンの得意とするところだが、若いミン・ギュドン監督はあまりに観客へのサービスに走りすぎて失敗している。

 前半はハイテンポで、6組の男女の人生のある瞬間を、ひとコマひとコマカットバックさせて見せ、快調だったが、それを1週間のドラマとしてまとめようとした性急さが裏目にでた。特に終盤の金、土曜がよくない。あんなふうにいろんな事件はいらない。

 特別な1週間ではなく、ありふれた1週間でよかったのではないか。そのありふれた1週間が見終えた後で特別なものだった、と思えるように作るべきなのだ。なのに、誘拐事件や、地下鉄のホームでの転落とか、なんかやり過ぎである。最初から設定されてるとはいえ映画館の閉館やら、テレビ番組で病気の娘のためにバスケのシュートを決めるとか、やりすぎが鼻に付く。事件に頼らなくてはドラマは作れないという安直な姿勢は考え直したほうがいい。

 終映後のティーチインで監督が『マグノリア』に影響を受けて作ったと言っていたが、「あんたはあの映画の何を見ていたのか?」と突っ込みを入れてやろかと思った。空から蛙が降るってくる、あのラストの感動シーン。あれくらいの事件を描かなくては映画の力にはならない。小手先の小事件をいじましく見せて映画のクライマックスです、なんて言われても、こちらはしらけるだけである。

 ベタな話が多すぎるし、甘すぎる。商業映画としてはこれくらいしないと観客に飽きられるとでも思ったのか。それにしてもせめて『大停電の夜に』くらいのレベルに達して欲しかった。

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