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映画・演劇のレビュー

壁井ユカコ『イチゴミルクビターデイズ』、中村航『あなたがここにいて欲しい』

2007-12-29 15:32:35 | その他
 壁井ユカコのこの小説は2人の女の子の友情を描く。24歳と17歳。二つの時間を行き来して、2人の女の子のあの頃と今を描く。

 イチゴミルクが大好きだったあの頃。そして、もうイチゴミルクなんて、甘いものは飲めなくなってしまった今。(僕は40代になった今もイチゴミルクが大好きだが・・・)あの頃、夢を現実として信じたかった。だから彼女の嘘を純粋に信じていた。だけど、いつまでもそんな嘘を無邪気に信じてはいられない。それが大人になるということだ、なんて思わないけど。

 この小説は大人になることの痛みを優しく教えてくれる。ラストでお金を返すために彼女に会いに行く場面が心に痛い。ほんとうの自分を見られて気まずい思いをする彼女のほんの少しの見栄が痛ましいのだ。このささやかな小説はありふれた誰にでもあるような感傷を丁寧に描く。


 中村航のこの小説は男の子の友情を長い歳月の中で描く。とても軟弱な小説だと思う。でも、この優しさはイヤではない。時にはこんな世界でまどろんでみたいと思う。中村航はいつも静かで優しい。

 小さな頃からの吉田くんと又野クンのつきあいが描かれる。友情なんていうのは少し恥ずかしい。幼稚園の遠足の場面から始まる。小学校の図書館でかくれんぼしたこと。又野クンが不良になっても、2人の付き合いは変わらない。そして、吉田くんは、結婚して寿司会席の店を出した又野クンの店にに招待される。これから、どんな人生が待ち受けているのかは分からない。しかし、みんなが幸せであって欲しい。そんな気持ちにさせられる。

 この2作をほぼ同時に読んだのだが、同じような同性同士の友情が描かれていて偶然とはいえ面白かった。

 余談だが、中村航のほうには先日見た『ハミングライフ』の原作も収められていた。公園にいた捨て犬が原作では捨て猫になっていて、納得。ストーリー自体もこちらのほうが自然である。

 

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