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映画・演劇のレビュー

柚木麻子『あまからカルテット』

2014-06-24 22:02:22 | その他
 なんと、『スープの国のお姫様』の後に読んだこの本もまた、食をめぐるお話だ。偶然だが、なんだか不思議な連鎖。楽しい。『ランチのアッコちゃん』の柚木麻子だもの、当然のことか。

 女子中学の頃からのなかよし4人組のお話だ。29歳になった彼女たちの友情が描かれていく。4話からなる(もちろん、それぞれが主人公となる)連作、そこに最後にもうひとつ、全員を主人公にした最終話が用意される。まぁ、至れり尽くせりの作品。

 読んでいて、とても幸せになれるのも、『スープの国のお姫様』と同じ。でも、こちらの方が少しコミカルで、軽い。なんだか出来すぎのような気もするけど、それがまた心地よい。女同士の友情は最強だ、なんてノンキなことを言いたくなる。4人のキャラもパターンかもしれないが、それぞれ個性的で、あるある、と思わせる。こんなふうな女たちが、きっとどこにでもいて、それぞれが幸せに暮らしているのだろう、なんてノーテンキに思う。それくらいにこの小説はお気楽なのだ。でも、それはバカにしているのではない。僕としては、ベタほめしてる。だってこれは痒い所に手が届くほど心地よいのだから。

 みんながそれぞれ悩みを抱えて生きている。自分じゃないほかの3人が羨ましい。でも、それって4人ともそう思っている。人はみんな自分にないものを求めるからだ。自分の悩みは自分だけのもの。でも、苦しいときには3人が助けてくれる。そんなふうにして、持ちつ持たれつで4人の関係がずっと続くようだ。いなり寿司、甘食、ハイボール、ラー油、最後はおせち料理。いろんなものをごっちゃにして、でも、そんなひとつひとつをとても上手く料理していく手腕はさすが、としか言いようがない。彼女の手にかかると、どんなものだって、おいしいものに変わる。

                      ごちそうさまでした。




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