今年の春演参加作品。なんと劇団としては3年連続の公演となった。もちろんのこと、最初はこんなことになるとは思いもしなかったはず。初演は2022年。その後作品は文化庁芸術祭優秀賞、関西えんげき大賞優秀作品賞、大阪演劇フェスティバル作品賞を受賞した。
今回の東京公演は関西えんげき大賞の副賞での公演となるらしい。駒場アゴラ劇場で5ステージ。毎回ほぼ満席になったと聞く。僕は今回は配信で見せてもらったのだが、心配は杞憂に終わった。
演出のしまさんから「東京公演は大阪弁にして上演します!」と聞いていたから。大阪から来る劇団だから、大阪弁という安易な理由ではないことはわかっているけどかなり不安だった。第二次世界大戦末期のカナダ、カルガリーが舞台である。それを大阪弁って。あり得ない。だが、あり得た。大阪弁が自然で滑らないどころか、それによってとてもテンポよく話が展開していく。こういうことがあるのか、と驚く。わざとらしい大阪弁ではなく、それがそこで暮らす普通の人たちの会話として機能する。だいたいカルガリーだからほんとなら英語(フランス語?)なのだ。翻訳劇であることの前提に立ち帰り、ならば大阪弁でも可能だと踏んだ。
作品自体の完成度の高さは十分すぎるくらいに知っている。5人の役者たちは3度目の新しい挑戦を、進化しながら役を深化させた。流れるようなタッチで2時間10分、この作品を淀みなく見せる。しまよしみちの演出には迷いはない。今という時代だからこそこの作品の描く銃後の女たちの戦いは意味を持つ。これが問いかけるものと向き合い「戦争」という普遍に挑む。
余談だが、大阪春の演劇まつりはこの作品に「特別功労賞」を授与した。