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映画・演劇のレビュー

『3時10分、決断のとき』

2010-02-27 10:23:14 | 映画
 アラン・コルノー監督の新作『マルセイユの決着』を見た。2時間半以上の大作である。昨年ひっそりと劇場でも公開された。こういうフイルムノワールは昔盛んに日本でも公開されていたが、今はもう誰も見向きもしない。映画は悪くはない。だが、わざわざ今こういう映画を観なくてもいいだろ、と僕でも思う。ジャン=ピエール・メルヴィルの『ギャング』(66)のリメイク。こういう映画をフランスは今もせっせと作っているのか。しかもそれなりに大作だ。(DVDパッケージには製作費40億円! とか書いてある)

 主人公は例によってダニエル・オートゥイユが演じる。フランスには彼しかこういう映画を任せれる人はいないのだろうか。テンポはあまりよくないから、少し退屈する。だが、最後までなんとか飽きずに見ることは出来た。時代錯誤のギャングの生きざまを60年代を背景にして描かれていく。なんでもない映画だ。

 そして、今日はこの『3時10分、決断のとき』を見た。こちらは同じように時代錯誤の西部劇。なぜこういう映画が作られるのか、よくわからない。もちろんこちらも悪い映画ではない。それどころか、かなり感動させられる。正直言うと見てよかった。だから、こうしてここに書いている。

 これは1957年に公開された西部劇『決断の3時10分』のリメイクらしい。同じだ。日本人が時々時代劇を欲するように、アメリカ人は西部劇を、フランス人はギャング映画を無性に見たくなるのだろうか。だが、そんな映画を日本人はあまり興味を持たない。その結果これらの映画は本国ではそこそこヒットしても日本にまではやってこない、というのが今の現実だろう。僕がこれを見たのは家人が借りてきたからだ。付き合いで見ただけで普通なら、この2本は見ない。(たぶん)僕は基本的に『今』のことにしか興味はない。

 とはいえ、付き合いで見ただけの映画にこんなにも心動かされることもある。この映画が日本でもひそかに喜ばれたのもうなずける。アメリカではかなりヒットしたようだ。さもありなん、である。単純な西部劇だ。これがなぜ今作れるのだかは、見終えた後の今も依然よくわからないままだ。だが、この父と息子の絆を描く映画は、西部劇としてではなく、親子関係の物語としても、心に沁みた。僕はそこが気に入ったのだ。しかも、よく出来たクラシック映画である。なのに、単なるノスタルジアには留まらない。そこがいい。

 誇れるものが何もない。自分に自信もない。そんな父(クリスチャン・ベール)が、彼のことを尊敬しきれない息子に対して、自分の誇りを賭けて戦う。息子は必ずしも父をバカになんかしていない。家族を守るために必死になっている父を、これまでもきちんと見ている。どちらかというとコンプレックスを感じているのは父の方なのだ。彼は息子に負い目を感じている。戦争で片足が不自由になり、家族の対して充分な責務を果たし切れていないと思っている。

 ひょんなことから寡黙な彼は強盗団の主犯である男(ラッセル・クロウ)の護送をすることになる。息子は父と共に行動する。

 派手なアクションもあり見所満載の映画だが、そんなことはどうでもいい。ただ、父親が自分のために息子の前で何が出来るか、その1点だけでこの映画はすばらしい作品となった。主人公の2人がなぜか心を通い合わせてしまうという展開はベタだが、50年前の西部劇が原作なので仕方ない、というか、こういう題材でしか今ではこんな内容や展開の話は描けないのかもしれない。
 
 表向きは派手な西部劇だが、ノスタルジックなこの作品は、僕たちに生きていくための勇気を与えてくれる。見て損はない。

 




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