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映画・演劇のレビュー

『インディアン・サマー』『手紙』

2008-03-07 11:47:51 | 映画
 07韓流セレクションの再映でパク・シニャン特集として2本を見た。あまり期待してなかったが、実は思ったよりもよく出来ていてほっとした。わざわざ時間をかけて最低の映画を見るのは嫌だし。

 「あまり期待してない」とは言ったが、本当は「もしかしたら隠れた傑作、掘り出し物はないか」なんて思ってる。この手の韓国映画は、強引なつくり方をしていて、腰が引けてしまうものも多いが、『8月のクリスマス』や『春の日は過ぎゆく』のように、(というか、どちらもホ・ジノ監督による大傑作だが)凄いものはたくさんある。まぁ、そこまでいかなくても、それなりに誠実な映画はたくさんあり、丁寧に接したなら、きっと隠れた凄い作品がどこかでひっそり公開されているのではないか。例えば『ワニとジュナ』のような誰も知らないけど、すばらしい作品は確かにあるのだ。だから、ついこういうものにも食指を伸ばしてしまう。

 ソ・ヒョジュン監督『インディアン・サマー』は、ちょっと作り方が荒っぽいが、悪くない映画だった。前半は、頑なに心を閉ざした被告と彼女の国選弁護人となった男との出会いから、2人が無罪を勝ち取るまで。ここまでで1本の映画を作ってもいい。しかし、ここまでで半分。この後、2人が再会し、一瞬恋に落ち、そして、後半へ。彼女が再び法廷に呼び戻される。検察が証拠を見つけ、死刑の求刑がなされる。彼女は再び心を閉ざして、自分の罪状を認める。

もう、これ以上生きていたくないから、最初から死ぬつもりだったのに彼と出逢ってしまって、ほんの少し心が揺れてしまう。とても優しい彼の誠実さに一瞬だけ、生きたいと思った。しかし、これまでの彼女の人生を思うと、もう取り戻すことはできない、と感じる。夫は決して悪い男ではなかった。ただ弱い男で、彼女への暴力も含めて、すべてが彼の弱さの裏返しで、そんな彼を救うことが出来なかったのだ、と思う。

 こういった女の側の心情をもう少しきちんと描いて欲しかった。説明不足である。しかも、描き方の雑さもあり、このメロドラマに充分には感情移入できなかった。かなり好意的な観客のつもりなのだが。

 もう1本はイ・ジョングク監督『手紙』。これはちょっとあまりにベタ過ぎて見てられない。主人公2人には好感が持てるが、お話が、甘すぎ。全く奥行きのないペラペラな内容。30分くらいのストーリーしか用意できてない。それを水増しして90分にした。出会いから結婚までが30分、幸せな日々から病魔に侵され死ぬまでが30分、その後の日々30分。3部構成。この第3部が長い。(もう話終わってるしね。)

 話自体が書割然としていてつまらない。この映画のパク・シニャンはまだ若くて『インディアン・サマー』のちょっとくたびれて憂いを秘めた表情との対比はファンにとってなら嬉しい2本立だろう。

 それにしても、せっかくの美しい風景が惜しい。おきまりのラブ・ストーリーが(こんなにも濃い話なのに)あっさりと描かれていて、決して全否定すべき映画ではないが、もう少し余白が輝くように演出して欲しかった。

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