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映画・演劇のレビュー

『スティーブ・ジョブズ』

2013-11-04 21:30:37 | 映画
僕はいろんなことに疎い人なので、このジョブズさんという有名な人がどんな人なのか、まるで知らなかった。アップルの創始者で、Macや、なんだかんだを作った人らしいが、よく、わからない。だいたい僕はコンピュータが苦手だ。というか、いろんなことが出来ない。今こうして触っている癖に、まるでわかってない。

 そんな僕なので、この映画に描かれる世界は想像を絶する。でも、とりあえずはこの人に対してまるで先入観もなく映画を見ることが出来た。とても凄い人なのだ、ということがよくわかった。しかも、映画はとてもよく出来ている。ジョブズというわがままで、傲慢な男が世界を変えていく姿には感動させられる。おもしろい。変なやつ、って好き。

 世の中には凄い人間がたくさんいるけど、コンピュータなんてものを作る人なんて想像を絶する。でも、彼らがとても変人で、周囲からもそういう扱いを受けていて、孤立している、という状況は理解できる。

 彼らは理解されないのではなく、理解を拒否する。わがままなやつらなのだ。この映画は、時間を追ってそんな彼と彼の仲間たちがたどった歴史を見せてくれる。自宅のガレージに仲間を引き込みアップルコンピュータという会社を作って世界と喧嘩していく。続々と考えられないようなヒット商品を生み出す。

 そんな彼の破天荒な生き方が描かれる。しまいには大きくなりすぎた会社で居場所を失くし、解雇される。新製品の開発に莫大なお金を投入して、役員から総すかんを食らう。自分が作った会社から、追い出されるって、普通ならあり得ない話だ。でもこの男なら仕方ない、と思える。組織は大きくなると、個人では制御しきれなくなる。自分だけの会社ではなくなるのだ。つまらない話だけれど、そういうものなのだ。

  でも、ジョブズは負けない。もう一度、自分の会社に復帰する。映画は、そんなこんなの顛末をとてもわかりやすく順を追って見せてくれる。彼が生きた時代と、彼が作った時代を映画は淡々としたタッチで見せていく。ことさら彼に感情移入することもなく(だって、嫌な奴だし)でも、彼に批判的になるわけでもない。

 アシュトン・カッチャーはこのジョブズという男を等身大の異端児として演じる。批評はしない。ただ、彼が生きたままを見せていく。監督は新鋭のジョシュア・マイケル・スターン。実に上手いし、これだけの大作なのに気負いがないのがいい。

 壮大な歴史ドラマであり、偉人伝でもある、はずなのだが、そんなふうにはまるで描かれてないのもいい。大体コンピュータを作った男なんていう地味な話で映画を作ること自身困難なことのはずだ。視覚的に派手な見せ場を作れるわけでもない。壮大なのに地味、というなんだか矛盾を抱えながら、2時間8分の大作を飽きさせることなく、見せきる。これは実に面白い映画だ。

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