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映画・演劇のレビュー

『神様の思し召し』

2017-12-05 21:44:45 | 映画

東京国際映画祭で観客賞を受賞し、昨年公開されたばかりの作品なのだが、もうDVDになっている。(しかも、GEOでは、なんともう、旧作になってるし)88分という短さ。イタリア映画らしいテンポと、ノンシャランとしたタッチがいい。

 

優れた外科医だけど、とても傲慢でサイテーな父親で、でも(それなのに)、みんなから愛されている男が主人公。彼が、いきなり神父になるとい言い出した息子を諦めさせるため、彼をたぶらかす神父(と、この父親は思い込む)の化けの皮を剥がそうとする。相手は前科者で、型破りで、カリスマ神父。これはそんなふたりのお話である。

 

ラストの展開も含めて実に上手い。ただのコメディだと、笑いながら見ていたら、はっとさせられる。甘い話なんかではない。しかも、結末を知らさないまま終わるという映画にあるまじき振る舞い。でも、それだからこの映画は信用できる。あの大胆なラストに納得させられる。神様はちゃんと僕たちを見ている。才能のある天才外科医であろうとも、彼は実に愚かで、もと、犯罪者であろうと破天荒な神父は、ちゃんと正しい方向に人々を導く。だからといってどちらが正しいとか、どちらが間違っているとか、簡単に答えを出すことはない。そんなのは、不可能なのだ。この日本語タイトル(きっと原題も、そうなのだろう)が映画の内容を実に的確に指し示す。

 

主人公のふたりだけではなく、脇役も含めて、ちょっとした描写だけで、とても上手く描き込まれてある。主人公の妻や(彼女が学生運動に目覚めていく部分は凄い)、子どもたちも、リアルだ。この状況の中で彼らが変わっていく様までもがちゃんと描き分けられる。短い時間のなかで、人がこんなふうに変わってくのか、と思うと、なんだが、人生は素晴らしい、なんて大袈裟なことすら思う。

 

 


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