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映画・演劇のレビュー

エイチエムピー・シアターカンパニー『四谷怪談 雲ノ向コウニ見タ夢』

2017-12-05 21:42:52 | 演劇

 

 

昨年初演した作品をもう再演してさらにパワーアップさせる、ってエイチエムピー・シアターカンパニーの得意技になりつつある。しかも、再演が実に面白いから、もう一度見たくなる。今回は前回同様の男女版にさらにはミックス版まで三種類。しかも、この『四谷怪談 雲ノ向コウニ見タ夢』とセットで翌週には『盟三五大切』も同じパターンで上演される。2週連続上演というのも大胆だ。

 

 

お話はものすごいスピードで描かれる。初演のときにはその早さについていけないくらいだったが、今回は心づもりが出来ていたから、大丈夫、と思ったのに、改めてここまで展開が早いのか、と驚くことになる。次はどうなるのか、お話はわかっているのに、それをこの早さでやられると、早送りしてDVDを見ている気分。

 

アイホールの広さは存分にこの作品世界を体現した。初演のウイングフィールドでは出来なかったことだ。役者たちのアクティングエリアも拡大し、結果的に芝居に広がりが生じる。同じなのに、なんだか違うイメージを残す。(まぁ、印象の問題なのだが。)ウイングでの濃密さから、世界の広がりへと。

 

お岩の死から怒濤の展開、死屍累々の惨劇。そして、その後の静かなエンディングへと、ちゃんと緩急も付けながら、90分強で、一気呵成に見せてくれる。膨大な内容からお話のポイントを絞るのではなく、そのすべてを詰め込もうとする。なのに、ダイジェストにはならない。笠井さんはなんだか自由自在なのだ。

 

7人の役者たちが27人を演じ分ける。今回、僕が見たのは、鼠組。昨年は男女版2本を見たのだが、作品としては女性が演じた方が面白かった記憶がある。だから、今回1本だけ見るのなら男性7人のほうを、と思った。

 

確実にレベルはあがっている。情感に流されず、スマートでクールに見せていくのがいい。伊右衛門を藤田和広。岩を澤田誠。本来ならこの二人の話なのに、そうはしないのが、この作品。かれらふたりすら、群像の中に埋もれていく。

 

今回の演出は、初演と同じスタイル。ラストの夢のシーン、討ち入りの列を見送る雪のシーンは情感たっぷりに見せてくれる。テンポがいいだけではなく、メリハリもしっかりしているから、一本調子にはならないのだ。そして、飽きさせない。ケレン味を排して、しつこくなく、シンプルでスタイリッシュに。企画意図を余すところなく満たして、完成度の高い芝居を実現している。とても気持ちのいい作品だった。

 


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