※ ワシントンDC/フリップスコレクション(5) ‐ DC&NYの美術館にみる泰西名画選(5)
フリップスコレクション、19世紀後半にパリで生まれた<印象派>へと移る。
パリ在住の裕福なイギリス商人の息子として生まれ、英国籍であり乍ら生涯の大半をフランスで過ごしたアルフレッド・シスレー(1839-1899)。
穏健で控えめな性格だったとされ、豊かな感性でパリ近郊の風景画を数多く描いている。
その彼の 「ルーヴシエンヌの庭 ‐ 雪の効果」が今回の作品。
1871年の普仏戦争敗北後のパリ、世界最初の社会主義政権、パリ・コミューンを避け、同年から三年間暮らしたパリ郊外のルーヴシエンヌの冬景色を描いている。
降り続く雪や屋根に積もる雪の柔らかい質感を表現した本作、やや青みをおびた大気と木々が寒さを示しているのと対照的に、家の壁や塀の茶や浅黄が幾分かの暖かみを補って、春の雪のような印象を与えている。
雪道に傘を差し歩く女性は、突然の大雪に戸惑っているのかも知れない、そんな解釈をしたのだが、どうなんだろう。
ちなみにシスレー、ルーヴシエンヌの雪景色をモチーフに 「<ルーヴシエンヌの雪>」(オルセー美術館蔵)を描いているが、そこには冬の厳しさが窺える表現になっている。
ところで彼、本作の前年にほぼ同じ構想・構図で 「<ルーヴシエンヌの庭>」(所蔵不詳)を描いている。
傘を差した女性、雪の朝に出掛けて、初夏の陽射しの昼下がりに帰って来た、なんてことないよねえ!
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1211