パラティーナ美術館にひっそりと架かる一枚の絵。
それは、ラファエロ・サンティ、「ヴェールを被る婦人の肖像 」。
この絵にまつわる悲しい話は、ローマは下町の<トラステベレ>、ファルネジーナ荘から始まる。
没後60年、ラファエロの遺品から一枚の裸婦像が見つかった
描かれていたのはトラステベレに住むパン屋の娘、
ラファエロの恋人でフォルナリーナと呼ばれていた
当時彼は、ファルネジーナ宮殿で仕事をしていて、
パン屋で働く彼女を知り激しい恋に落ちた
彼は、愛する妻としてフォルナリーナを、当時、人
妻であることを意味する、ターバンを巻く女性に描く
その絵とは、ローマ国立美術館が所蔵する、「若い婦人の肖像 = ラ・フォルナリーナ」(右列)。
ラファエロは世を去る4年前、ひとりの女性の肖像、「ヴェールを被る婦人の肖像 = ラ・ヴェラータ」(左列)を発表する。
そのヴェラータから衣装を剥がすと、寸分違わぬ
裸体の、同じ髪飾りをつけたフォルナリーナになる
彼は、美しいフォルナリーナを、どうしても妻にした
かった
しかし、想いを込めたフォルナリーナの裸体は、秘
密にしなければならない
狂おしいまでの想いが、身代わりとして「ラ・ヴェ
ラータ」を描かせたのだ
自らの名前を 「ラ・フォルナリーナ」の腕輪に、
“ この女性はウルビーノのラファエロの妻 ” と刻印、
人の目に触れないように封印する
ラファエロは、奇しくも37歳の誕生日に世を去ったとされ、その亡骸はローマの<パンティオン>に埋葬された。
フォルナリーナ、本名マルゲリータ・ルーティは、その葬儀への参列さえ許されなかったという
葬儀の翌日、ラファエロの妻を名乗る女性が修道院の門を叩いた
修道女への道を選んだマルゲリータ・ルーティ、フォルナリーナその人だった (美の巨人たちから)
ラファエロは 「ラ・フォルナリーナ」に非売の署名 “ E I ” を入れ(右列最上段の右下隅)、終生手放さなかったと言う。
Peter & Catherine’s Travel Tour No.317
ところで、「ラ・フォルナリーナ」があるのは、テルミニ駅の近くのローマ国立博物館のことでしょうか?
少しややこしいのですが、私たちが訪ねた折には、「バルベリーニ宮」の中の「国立古典絵画館」となっていました。
その後、国立美術館に名前が変わったようです。トレヴィの泉から北東へ500mほどのところにあります。
ここには、ラファエロのほか、カラヴァッジョ、ティントレット、グレコなどもあります。ローマに行かれたら、訪ねてみてみて下さい。