※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(39)
農民画家ピーテル・ブリューゲル(1525-1569/初期ネーデルランド絵画)。
彼が活躍したのは、“ 神がすべてを見ているという中世的思考を形象化した時代 ” とされている。
そんな時代背景の中で描かれたのが、代表作 「バベルの塔」(1563年/114×155cm)。
主題は、旧約聖書・創世記のノアの箱舟の後、アブラハムの物語の前の11章二ムロド王の挿話。
彼が描こうとしたのは、人間の思い上がりや愚かしさ。
が、話の筋を追うと長くなるので小編<バベルの塔>を参照して頂ければと思う。
それは別として、構築物や土木技術への並々ならぬ関心が示された本作、塔の構造や工事の様子などを呆れるばかり克明に描いている。
イタリアでの修行時代、ローマで見たコロッセオがイメージとしてあったことが窺える。
ところで彼、もう一枚 「バベルの塔」(1563年以降/60×74.5㎝/ロッテルダム・ボイマンス美術館蔵)を描いている。
ウィーン版からおそらく二年以内に、約1/4のサイズで描かれたボイマンス版。
そこには、愚かしき二ムロド王の挿話は除かれ、専ら塔のでっかさに焦点が絞られている。
ほぼ完成した低層部では、人間が蟻のように微細に描かれてい、上層部では止むことなく工事が進められている。
工事中を示す赤い壁、塔に懸かる暗緑色の雲とその影が、遠くない先に神の怒りに触れるであろうことを予兆させている。
とまれ傑作 「バベルの塔」、このボイマンス版によってブリューゲルの構想は完結したのである。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1170
※ 「美術史美術館(20) ‐ ブリューゲル(1)」へは、<コチラ>からも入れます。
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