※ オーストリア/ウィーン美術史美術館編 ‐ 中欧美術館絵画名作選(38)
ウィーン美術史美術館が誇るブリューゲル・コレクション。
農民を題材に数多く描き “ 農民ブリューゲル ” とも呼ばれたピーテル・ブリューゲル(1525-1569/初期ネーデルランド絵画)、生年も生地も推測の域を出ず、出身も不明とされている。
その彼の初期の代表作とされる 「謝肉祭と四旬節の喧嘩」(1559年/118×164.5cm)から始める。
彼が好んで描いたのは “ 自然の悠久の営みと共に、人間の様々な愚行が繰り広げられる世俗の世界、『さかさまの世界』であった ” とされている。
ちなみに、 “ イタリアの民衆版画 『さかさまの世界』では、羊が羊飼いの髪を刈り、荷車の後から牛が歩くといった寓意表現によって、人間の無知や愚行を風刺している ” とか。
そしてその風俗画の成立を促したのは、“ 単なる日常生活への好奇心だけではなく、その背後に教訓的な精神があることを見逃せない ” ともされている。
本作に話を戻すと、浮かれ騒ぐ謝肉祭も最後の火曜日となり、翌日の灰の水曜日から始まる四旬節、キリストの荒野の40日間を偲ぶ斎戒期も目前である。
本作の40年ほど前に始まった宗教改革によって混乱する世相を風刺したとされる本作、前景で対峙する太った男をプロテスタント、貧相で痩せこけた老婆をカトリックに擬人化したのだとか。
その前景を切り取れば(下)、焼き豚の串を振りかざし酒樽に跨った男=謝肉祭と鰊(にしん)を載せた長い木杓をもった車椅子の老婆=四旬節が、今、まさに一触即発の様子。
その二人を中心に町の広場、井戸があるのでフォーラムか。を舞台に、向かって左側に謝肉祭の浮かれ様が、右側に四旬節にちなむ信心様が、俯瞰的にこれでもかと描き込まれている。
本作、その井戸を中心に民衆が弧を描いている。
これは、初期ネーデルランド絵画の先駆者、奇画の<ヒエロニムス・ボス>(1450-1516)の初期の代表作「<七つの大罪と四終>」(プラド美術館蔵)の影響を強く受けたからに他ならないとされているようだ。
初回、これから続くブリューゲル作品を理解するため、少し長くなったが、次回からは短くしたい。
Peter & Catherine’s Travel. Tour No.1167
※ 「美術史美術館(19) ‐ ブリューゲル(序)」へは、<コチラ>からも入れます。
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