茶事の勉強をしだすと、「夜咄の茶事」と「朝茶の茶事」を一度はしてみたいと言われる方が多い。
夜咄の茶事は、冬至の前後三カ月、冬の寒い夜半に灯火の下で一服の茶を飲み語らう茶事だが、十二月から二月にかけては年末や正月などと重なり、主婦にとってなかなか機会に恵まれない、しかも、夜にとなればなおさらのこと。
で、「お稽古だから三月でもいいじゃない」と、時間に融通がつきやすい六名で昼間、夜とみたてて挑戦した次第。
# 茶室は奈良の菊屋さんの席をお借りした(左/右)
# 今回も、道具と同様お料理も持ち寄り、当日、水屋で炊飯、料理も温めた
短繋で使う灯芯、折れやすいので濡らした新聞紙で包み湿らしてから使いたかったが時間が迫りそのまま使う、準備不足。
待合で出した甘酒にしょうがの汁を入れるのを忘れるなど、相変わらずのどたばた振りだったが、その模様を紹介する。
《迎付》
# 腰掛待合に客も揃い手燭を右手に手桶を左手に蹲に(左)
# 蹲周りに水を打ち、手水を使い手桶の水を音高く蹲に張る
# 客用に湯桶を持ちだし、柴折戸を開け正客と亭主が無言で手燭を交換(右)
《初座席入》
# 明かりは炉の側に置かれた短繋と手燭だけなので、軸は大きい字で書かれていると読みやすい(左/右)
# 細かい字で読みにくいときは、手燭持って(扱いに決まりあり)床の間に上がり拝見することは出来る
《初炭手前》
# 挨拶の後、取りあえず一服の前茶をおもあいで召し上がってもらい、初炭手前に入る
《懐石》
# 窯の湯が沸きあがる間に料理を出し一献差し上げる(左/右)
《中立》
# 主菓子を召し上がると客は退室
# 亭主は床の間の軸を外し、灯明、ろうそくの油煙を吸うといわれている石菖をおき(左)
# 短繋の雀瓦の蓋を外し下の皿の上におく
# 水指、茶入を飾り、準備が終わると席入りの合図に喚鐘を5点打つ、客はつくばって聞く(右)
《後座席入》
# 濃茶、続き薄点前でお茶を出す
# 手燭の明かりで道具を拝見する客(左)、短繋の灯芯を掻き立てると明かりが少し強くなる(右)
《留め炭》
# 退室の前のひと時、「どうぞごゆっくりなさって」の意味で箱炭斗を持ち出し、炭をつぐ
# 客には「遅くなり長居はご迷惑」の立ち炭、一期一会、夜咄独特の風情
日頃、どれほど明るすぎる生活しているのか、闇が無い生活が何時頃からか普通になったのだろう、明るさの嘘っぽさを教えられた気がする。
黄味がかった灯明やろうそくの揺らめきが、光のシンフォニーになり魅了する。 ()
Peter & Catherine’s Travel Tour No.457
私も一度だけ参加させて頂いた事がありますが、真っ暗闇でろうそくの灯りだけでは、足下もおぼつかなく、大変な思いをして席入りしました。静かで灯明のみの明るさというのは、人との距離を縮め、お互いに相手を思いやり、そういう空間を作り出してくれました。
昔、山小屋で怖いほどの降り注ぐ星空を見たとき、自分の住んでいる所がいかに夜でも明るいのかという事を思い知らされました。
明るいという便利さと引き換えに見えなくなるものもあるのですね。sakura[E:cherryblossom]
私の好きな絵画でも、光がもたらす明暗に画家の息吹が感じられて、驚くことがあります。
金剛薬師如来の絵葉書見ながら感じました。仏像も自然の微妙な光の中で見ると、思わず合掌してしまうんでしょうね。[E:libra]