尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

吊り革

2007年08月13日 19時30分59秒 | 決定稿集(カメラオブスキュラ)
「吊り革」



終着駅で
待機しているプラットホームは
よく磨かれるほど
洋上の滑走路に似てくる

一方 
快速列車の
吊り革の下には
朝日をあびて
沈黙の行者のような
顔 顔 顔

白いワイシャツやブラウスを
太い影が走りはじめる
X Y Z
鉄橋だ

ドロドロドロ
という音響にまぎれ
男だか女だか
わからない声が

 さびしい

それは透きとおって
小骨まで見えた

自分達の小さな
くしゃみ
のようでもあったから
あちらこちら
瞬きがふえただけ
あなたもわたしも
声の主を捜さない

終着駅付近の
カーブにさしかかると
エアーブレーキがかかり
慣性の法則で
すべての吊り革は
斜めになった
真っすぐになると
誰もいない



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