尾崎まことの詩と写真★「ことばと光と影と」

不思議の森へあなたを訪ねて下さい。
「人生は正しいのです、どんな場合にも」(リルケ)
2005.10/22開設

詩「何もしないで、見ているだけ」

2012年11月03日 00時35分13秒 | 新詩集
―彼は…
と言ったきり
彼女はうつむいて口をつぐんでしまった
そのあとを
彼女の代わりに
―何もしないのですね
と僕が続けた
―そんなの、もう恋人ではない!
これも僕が言った
―そう、恋人じゃないのです
と、頭をあげて彼を弁護するように彼女が言った
―だけど、あなたを見ているだけなのでしょう
と、僕はいらいらして言った
―そう、彼は見ているだけ、私に何もしないで
―そんなの、もう人間じゃない!
と、僕は怒って言った
―そう、彼は神です
涙にうるんだ彼女の目を見ながら
―そんなの、もう神なんかじゃない!
と、僕は言えなかった

神がこんな真夜中に、もし来ているとしたら
たぶん、黙っていると思うからだ
ほとほと困っているのだけれど

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