川上弘美って、なんだか、雲を掴むような、それでも読み始めると自分の意思とは反対に、底なし沼にずるずると引き込まれるように、えもいわれぬ 不思議な世界に連れて行ってくれるような作家だと思う。そういう意味では村上春樹に似ているかな?と思う。
図書館で本棚を見ていて、パールブルーの爽やかなカバーに思わず借りてしまった本。(確定申告が中々進まない、お尻に火がつくぞ!)
「センセイの鞄」のような夢とうつつの間にあってそこから抜け出したくないような、まったりとした物語でなく、淡く切ない恋愛小説だった。
川上弘美って、ホラーでも怪談でもないのに、文章の表現の仕方が、よく考えると恐ろしいようなところがある。
例えば、芥川賞を受賞した「蛇を踏む」でも「蛇を踏んでしまってから蛇に気付いた。」「踏まれたらおしまいですね。」とそのうち蛇が言い、それからどろりと溶けて形を失ったとか、「馬」でも背中が痒いと思ったら夜が少しばかり食い込んでいるのだったとか・・・
元々このような恋愛小説より、「竜宮」のような異型な物が出てくる小説こそ川上弘美らしいんじゃないかと思う私ですが。
とまたまた「書き出したら止まらない症候群」が出て、顰蹙を買いそうだから、「夜の公園」に戻ります。それでかいつまんであらすじを書くと、
真夜中の公園を一人で散歩する主人公「リリ」、その夫「幸夫」、リリの女友達で女子高の英語教師の「春名」、真夜中の公園でマウンテンバイクに乗る「暁」、この4人がそれぞれ「主人公」になって、各章が進んで行くこの作品の構成になっている。そして「暁」の兄の「悟」もこの物語にからんでくるという、一見どって事ないようだけど、うん?と考えてしまう。
リリは「夜の公園」を歩く。その横をマウンテンバイクが通りすぎていく。「帰りたくないなあ」と、リリはつぶやく。「リリは、幸夫が大好きだった(はずだった)。愛してさえ、いた(たぶん)。」それなのに、リリは幸夫が好きではないことに気がつく日々。
幸夫には何の責任もない、わたしが悪いと、心の底からリリは思っている。そしてそんなある時、スーパーマーケットで、マウンテンバイクの9歳も年下の青年に出会い、青年に好感を持ち、そのまま青年の部屋へ!
この小説の本筋は リリと春名という、女が二人、しかも親友同士、が対比的に書かれていて、男は夫である幸夫と、暁と悟の兄弟、この3人が女2人に奇妙に入り組んで関係していく。めちゃくちゃな不倫関係?愛憎劇、黙っていれば、泥沼に?そうならないところに、川上弘美じゃなければ書けない持ち味があると思う。出てくる人もその関係も、すべてがクールで希薄、見事なまでに醒めているのだ。
この本に出てきた「ほろほろと秋が去るね。」なんだか妙に印象深いフレーズ、こんな言い回しは私には出来ないなぁ。
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曇り 時々雨 7℃
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川上弘美って、ホラーでも怪談でもないのに、文章の表現の仕方が、よく考えると恐ろしいようなところがある。
例えば、芥川賞を受賞した「蛇を踏む」でも「蛇を踏んでしまってから蛇に気付いた。」「踏まれたらおしまいですね。」とそのうち蛇が言い、それからどろりと溶けて形を失ったとか、「馬」でも背中が痒いと思ったら夜が少しばかり食い込んでいるのだったとか・・・
元々このような恋愛小説より、「竜宮」のような異型な物が出てくる小説こそ川上弘美らしいんじゃないかと思う私ですが。
とまたまた「書き出したら止まらない症候群」が出て、顰蹙を買いそうだから、「夜の公園」に戻ります。それでかいつまんであらすじを書くと、
真夜中の公園を一人で散歩する主人公「リリ」、その夫「幸夫」、リリの女友達で女子高の英語教師の「春名」、真夜中の公園でマウンテンバイクに乗る「暁」、この4人がそれぞれ「主人公」になって、各章が進んで行くこの作品の構成になっている。そして「暁」の兄の「悟」もこの物語にからんでくるという、一見どって事ないようだけど、うん?と考えてしまう。
リリは「夜の公園」を歩く。その横をマウンテンバイクが通りすぎていく。「帰りたくないなあ」と、リリはつぶやく。「リリは、幸夫が大好きだった(はずだった)。愛してさえ、いた(たぶん)。」それなのに、リリは幸夫が好きではないことに気がつく日々。
幸夫には何の責任もない、わたしが悪いと、心の底からリリは思っている。そしてそんなある時、スーパーマーケットで、マウンテンバイクの9歳も年下の青年に出会い、青年に好感を持ち、そのまま青年の部屋へ!
この小説の本筋は リリと春名という、女が二人、しかも親友同士、が対比的に書かれていて、男は夫である幸夫と、暁と悟の兄弟、この3人が女2人に奇妙に入り組んで関係していく。めちゃくちゃな不倫関係?愛憎劇、黙っていれば、泥沼に?そうならないところに、川上弘美じゃなければ書けない持ち味があると思う。出てくる人もその関係も、すべてがクールで希薄、見事なまでに醒めているのだ。
この本に出てきた「ほろほろと秋が去るね。」なんだか妙に印象深いフレーズ、こんな言い回しは私には出来ないなぁ。
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