乙女高原ファンクラブ活動ブログ

「乙女高原の自然を次の世代に!」を合言葉に2001年から活動を始めた乙女高原ファンクラブの,2011年秋からの活動記録。

カヤネズミ・ペットボトルトラップ調査 中間報告

2018年09月02日 | カヤネズミ・プロジェクト

  2016年11月の草刈りボランティアの際、草原で見つかったボール状のナゾの巣は、笛吹川河原で見つかるカヤネズミの巣にそっくりでした。ただ河原のカヤネズミの巣はオギなどの茎に付いていて、「空中に浮いているソフトボールボール」みたいな感じですが、草原の巣はススキの株の真ん中の地表に作られています。ちょうど「ソフトボール」が半分地面に埋まったようで、見方によっては「東京ドーム」みたいに見えます。

  高槻さんから「これはカヤネズミに間違いないのではないか? 」というコメントをいただいたこともあり、多いに盛り上がりました。その年の冬には「草原の巣探し」が流行(!?)し、53個もの地表巣が発見されました。

  高槻先生が調べたところ、イギリスの文献に「カヤネズミの巣を探すのなら、植生の(高さの)真ん中あたりと、株の中を見なさい」とありました。日本でカヤネズミの巣というと、「植生の真ん中あたり」にある巣ばかりですが、イズリスでは地表巣も見つかっているということです。カヤネズミの分布域を見ると、広く、ヨーロッパ全域からロシアを横断し、ユーラシア東海岸から南下して東アジアまでという範囲です。中にはシベリアの寒い気候の地域も含まれます。ということは、乙女高原のように寒いところで見つかってもおかしくありません。今のところ、標高の一番高いところでカヤネズミが確認されたのは1200mであることもわかりました。もし、乙女高原で見つかれば、この記録を大幅に更新することになります。

 

  高槻さんを中心に、「乙女高原に本当にカヤネズミがいるか?!」を確かめるプロジェクトが始まりました。

  2017年5月、巣から糞を採取し、DNA分析してカヤネズミの存在を確かめようとしました。

  文字で書くと簡単ですが、巣を探して、使われているかどうかを判断し、大丈夫そうだったら、割り箸で巣を少しずつ崩して糞を見つけるというのは根気のいる作業です。残念ながら乙女の巣から糞は見つかりませんでした(メールマガジン第372号 2017.5.10)。

 その後、ウエハラも同じ調査を続け、見つけた糞を高槻先生に送りました。麻布大学の村上研究室でDNA抽出を試みていただきましたが、残念ながら検出できなかったそうです。巣から採取された糞は小さく、そのなかに食物はあったが、腸壁からの組織はあまりに微量だったということだそうです。

 

 2017年9月には高槻さんと、その門下生・奥津さん(高校の理科の先生)を中心にトラップ調査が行われました。「シャーマントラップ」というアルミ製の箱型のわなに誘因物(要するにエサ。具体的にはとんがりコーン)を草原内40個設置し、ネズミがかかるのを待ちました。合計ではヒメネズミ1頭とハタネズミ5頭が確認できましたが、カヤネズミは確認できませんでした(メールマガジン第378号 2017.9.16、第379号 2017.10.2)。

 

  2018年夏には、奥津さんの提案で、ペットボトルを利用したトラップを仕掛けることになりました。ペットボトル工作でトラップを作ります。トラップには園芸用の緑色支柱を付け、支柱を地面に刺して、「宙に浮く」ようにします。「カヤネズミが支柱を登ってペットボトルの中に入り、中のえさ(ヒマワリの種) を食べて糞をする。カヤネズミ以外のネズミはペットボトルの小さな口から中に入れない。ヒマワリの種の食痕と残された糞からカヤネズミの存在を確かめる」という作戦です。

  高槻さん・奥津さんがトラップを仕掛けてくださったのは7月2日ですが、その前から話を聞いており、「これなら自分たちにもはできそうだ」と、見よう見まねというより暗中模索でトラップ調査にチャレンジしてみました。トラップだけでなく、生のネズミも姿もぜひ見たい!と思ったので、センサーカメラを購入し、これも暗中模索で仕掛けてみることにしました。

 

 (0).トラップを設置したのは6月10日です。まだまだ周囲の草丈は低く、設置した3つのトラップが丸見え状態になってしまいました。地表からの高さは32~40㎝、トラップ間の距離は1m程度とし、雨漏りを防ぐため、ビニール袋をかぶせました。と同時に、杭を打って、それに2基のセンサーカメラを設置しました。カメラからもっとも近いトラップまでは約2mと1.5mです。雨が直接あたらないように、タッパウェアで作った雨覆いを付けました。動画モードではなく写真モードにセットしました。

 

 

 

(1).6月17日、わくわくしながらトラップとカメラの中身を確認しました。センサーカメラにはそれぞれ359枚・137枚の画像がありましたが、カヤネズミどころか動物が写っている写真は1枚もありませんでした。残念。風で揺らぐ葉などに反応したのでしょうか。トラップからトレイにヒマワリのたねをあけ、中に糞がないか確かめました。どのトラップも糞はなく、再度、たねを入れ、同じ場所にセットしました。残念。

 新たに5つトラップを設置し、計8つとしました。

 

(2).6月24日、マルハナバチ調べ隊終了後、参加されていた芳賀さん、井上らん、岡村さんに協力していただきながら、前回と同様な調査をしました。糞らしきものが確認されましたが、バッタの糞であると思われたので、近くにいたバッタを採取し、ビニール袋の中に入れ、1時間後にバッタを逃がし、中に残った糞を見てみましたが、やはりトラップの中に入っていたのはバッタの糞であると思われました。とはいえ、確実ではないので、一応、採取しました。カラメには2台とも300枚以上の画像が残されていましたが、ネズミの姿が写っているものはありませんでした。

 

 

(3).7月1日、一人で調査しました。損傷のあるバッタの死体が入っていました。カヤネズミは昆虫も食べることが知られています。カヤネズミの死体? ヒマワリの種の食痕も見つかりました。期待が高まります(後に、高津さんに見ていただいたところ、「バッタが食べた痕ではないか? 」とのこと)。カメラの画像はそれぞれ300枚以上ありましたが、写っているものはありませんでした。

  さらにトラップを4個追加し、合計12個としました。

 

(4).7月7日、谷地坊主観察会後、渡辺夫妻、井上さん、岡崎さん、鈴木さんに協力していただきながら調査しました。食痕や糞がすべてのトラップから見つかりました。また、カメラの画像を見てみると、ネズミらしきものが支柱を登っている様子が見られました。ただ、画像はどれも露出オーバーで白っぽくなってしまいましたが。

 なお、この日には高槻さんと奥津さんが7月2日にセットしたトラップ30個の位置を確認しました。これで乙女高原には合計42個のトラップが設置されたことになります。

 

(5).7月15日の調査でも食痕と糞が見つかりましたが、なんかカヤネズミではなさそうな気がしました。

 

(6).7月24日は、調査前に都留文科大学の北垣さんから、トラップについてさまざまなアドバイスをいただきました。大粒ヒマワリではカヤネズミは割れないので、事前に割っておくとよいとのこと。「麻やエゴマの実もよく食べる」とのこと。お昼にヒマワリの種を割って、午後の調査時に全部のトラップで入れ替えをしました。調査では食痕と糞が見つかりました。センサーカメラには昼も夜もテンの姿がよく写っていました。タヌキが写っている写真もありました。

 

 7月26日には北垣さんのアドバイスでセンサーカメラを静止画モードから動画モードに変えました。動くものに反応すると、10秒間自動的に録画されます。

 

(7).7月28日、台風通過により高槻さんが調査に来られなかったので、8月1日に高槻・奥津トラップ30個の調査を一人でしました。食痕も糞もあり、得られたサンプルは奥津さんに郵送しました。

 

 トラップの中に水が入り、ヒマワリの種にカビが生えていたり、芽が出ているものもありました。このままヒマワリの芽が大きくなったら大変です。保全している人間が外来種を導入してしまったんではシャレにもなりません。このような心配が起きないよう、餌として使うヒマワリや麻の種をレンジでチンして、発芽できないようにすることにしました。また、とんがりコーンなどの加工食品を使う方法もあると思います。

 

(8).8月3日、ウエハラトラップの調査をしました。前回、つぶしたヒマワリのたねを入れておいたので、糞のあるなしを中心にチェックしました。糞が見つかりました。トラップのうちナンバー1と3(センサーカメラの対象)にはヒマワリにプラスしてトンガリコーンを入れておきました。

 それぞれのカメラで24、450の動画が録画されていました。そのうち、ネズミが写っていたのは1ファイルのみでした。

 

(9).8月12日、ウエハラトラップの調査をしました。糞が見つかりました。12個全部のトラップについて、前日、電子レンジでチンした麻のたねに交換しました。ヒマワリのたねは注意深く回収しました。

 ○カメラにそれぞれ55、925の動画が録画されていました。そのうち、ネズミが写っていたものは20ファイルありました。8月14日にはカメラのデータ回収のみ行いました。それぞれ14、384の動画が録画されていて、うち46ファイルにネズミが写っていました。

 

(10).8月26日、ウエハラトラップ、高槻・奥津トラップの全部、合計42個のトラップを調査しました。前回、麻の実を入れたウエハラ・トラップ12個については、麻の実はとてもよく食べられていました。麻の実を割った・・・というより、穴を開けて食べているように見える食痕がありました。井上さんに協力してもらい、高槻・奥津トラップも調査しました。ヒマワリの種はよく食べられていました。縦に裂いて食べたような痕もありました。糞も回収できました。得られたサンプルは奥津さんに郵送しました。齧られたような穴が開いているペットボトルがありました。全部のトラップで、レンジでチンしたヒマワリの種に交換しました。

 

 カメラのデータ数は119、642。そのうち、ネズミが写っていたのは計10でした。

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