「ホテル・ピーベリー」 近藤史恵著 双葉社
ハワイ島にある日本人経営の長期滞在型のプチホテルを舞台にしたミステリー。
正直なところ、かなり「イマイチ感」が強かった。「サクリファイス」「エデン」「サヴァイヴ」― 一連の自転車シリーズが秀逸すぎたので、私の中で近藤史恵株はこのところ高値安定していたのに…。これを読んだ途端「利食い売りに押され、値を消す」。
カラクリは最後まで解らなかった。物語のフィナーレ「ああ、そうだったのか、そういうことか!」と謎が解けた時の清々しさはなく、「なんだ、そんなことか」というガッカリした気分になった。何よりも、たとえ物語の中であっても、「人を殺すってそんなに簡単でいいの?」というところに一番ひっかかった。人間が人間を殺すって、物理的にも心理的にもかなり面倒な事で、それをなし得るには相当なエネルギーが必要だと思う。犯人の中に、そういうエネルギーが充満している感じがしなかった。殺人犯をかばった共犯者の動機も希薄でつかみどころがなかった。近藤史恵の歌舞伎ミステリーも「おいおい、そんなことで、人が人を殺しますか?」という違和感があったけれど、それに似ている。
殺人事件と、主人公がハワイ島に現実逃避の旅に出るまでのサイドストーリーの関係もイマイチよくわからなかったし、 雑誌連載時に、明らかに、最終回に焦って色々詰め込んだようなバタバタした風情も好きになれなかった。
このままでは安値圏に放置してしまいそう。「サクリファイス」シリーズagainで、もう1度、近藤史恵を好きになりたい。
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