「殿様の通信簿」 磯田道史著 新潮文庫 2010/11/23読了 ![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kitune.gif)
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間もなく映画が公開される「武士の家計簿」の原作者・磯田道史先生の歴史エッセイの第二弾(多分…)。 とにかく、面白いっ! 勝手に、磯田道史先生ファンクラブを作ってしまおうか-というぐらいの勢いです。私は、磯田先生の歴史に向き合う姿勢がめちゃめちゃ好きだ~!!!
「武士の家計簿」は幕末の下級武士・猪山家の出納記録から、当時の家族のありようや、江戸から明治への時代の変化描きだしている。三代に渡るファミリーの記録ゆえに物語性があり、映画化までされることになりました。
「通信簿」は水戸光圀(=水戸黄門)、浅野内匠頭、大石内蔵助、前田利家など複数のお殿様を取り上げているので、全編を通しての物語性はないのですが…でも、その面白さたるや、「武士の家計簿」に勝るとも劣りません。歴史好きにはたまらない「へぇ~そうだったのか!」という歴史雑学満載。そして、大上段に構えることなく、なぜ、人は歴史を学ぶのか-その神髄を教えてくれるのです。
実は、磯田先生自身がお殿様の通信簿を付けているわけではなく、「土芥冠讎記(どかいこうしゅき)」というネタ本があります。元禄期に、江戸幕府が隠密(スパイ)を使って、各地の大名の評判、内情を探ってまとめたもので、現在、東大の史料編纂所にたった一冊しか残っていない超レア本なんだそうです。磯田先生が、その古文書を分かりやすく読み解き、別の補強材料を組み合わせながら、歴史上の有名人の真の姿を暴きだしているのです。水戸光圀は諸国漫遊ではなくて、本当は悪所(=遊郭)通いをしていたとか。でも、遊郭に入り浸った本当の理由を考えると……なかなか、興味深いのです。
特に、浅野内匠頭&大石内蔵助の項は笑えます。世の中には、忠臣蔵ファンが数多いて、年末ともなれば、毎年、どこかしらのテレビ局がドラマを制作したり、日曜洋画劇場で古い映画を流したりというのが恒例。その忠臣蔵のキーマン2人を、磯田先生は、ものの見事に切り捨て御免に処しています。
かつて、三浦しをんが「あやつられ文楽鑑賞」の中で、内蔵助のろくでなしぶりをさんざんに書きたてているのを読んで大笑いしたことがあります。でも、それは、三浦しおんの感性のなせるわざであり、忠臣蔵ファンも「わかっていない奴に笑われたって痛くも痒くもないもんね」と流せるでしょう。ところが、磯田先生は、史料に基づき、極めて客観的に内蔵助の「ふつうのおじさん」ぶりを淡々と明かしてしまっているので、忠臣蔵ファンは、ちょっとガッカリするか、もしくは、不愉快な気分に陥ってしまうかもしれません。
でも、磯田先生は決して、歴史のヒーローを貶めているわけではなく、歴史に名を残した人物への深く温かい敬意を持って、その人物の人間臭い一面を私たちに示してくれているのだと思います。
そして、「武士の家計簿」を読んだ時にも思ったのですが…日本の官僚制度のプロトタイプは江戸時代に出来上がっていた-ということを、改めて、認識しまた。もちろん、「だから、仕方ない」と現状を是認し続けてよいとは思いませんが、でも、「何もかも官僚が悪い」という議論では何も解決しないと思います。 江戸時代から脈々と続く、集団での意思決定の仕組みには、間違いなく日本人のメンタリティーが反映されているわけで、そこを冷静に分析することなくして、官僚制度の改革などできるはずもないのです。
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間もなく映画が公開される「武士の家計簿」の原作者・磯田道史先生の歴史エッセイの第二弾(多分…)。 とにかく、面白いっ! 勝手に、磯田道史先生ファンクラブを作ってしまおうか-というぐらいの勢いです。私は、磯田先生の歴史に向き合う姿勢がめちゃめちゃ好きだ~!!!
「武士の家計簿」は幕末の下級武士・猪山家の出納記録から、当時の家族のありようや、江戸から明治への時代の変化描きだしている。三代に渡るファミリーの記録ゆえに物語性があり、映画化までされることになりました。
「通信簿」は水戸光圀(=水戸黄門)、浅野内匠頭、大石内蔵助、前田利家など複数のお殿様を取り上げているので、全編を通しての物語性はないのですが…でも、その面白さたるや、「武士の家計簿」に勝るとも劣りません。歴史好きにはたまらない「へぇ~そうだったのか!」という歴史雑学満載。そして、大上段に構えることなく、なぜ、人は歴史を学ぶのか-その神髄を教えてくれるのです。
実は、磯田先生自身がお殿様の通信簿を付けているわけではなく、「土芥冠讎記(どかいこうしゅき)」というネタ本があります。元禄期に、江戸幕府が隠密(スパイ)を使って、各地の大名の評判、内情を探ってまとめたもので、現在、東大の史料編纂所にたった一冊しか残っていない超レア本なんだそうです。磯田先生が、その古文書を分かりやすく読み解き、別の補強材料を組み合わせながら、歴史上の有名人の真の姿を暴きだしているのです。水戸光圀は諸国漫遊ではなくて、本当は悪所(=遊郭)通いをしていたとか。でも、遊郭に入り浸った本当の理由を考えると……なかなか、興味深いのです。
特に、浅野内匠頭&大石内蔵助の項は笑えます。世の中には、忠臣蔵ファンが数多いて、年末ともなれば、毎年、どこかしらのテレビ局がドラマを制作したり、日曜洋画劇場で古い映画を流したりというのが恒例。その忠臣蔵のキーマン2人を、磯田先生は、ものの見事に切り捨て御免に処しています。
かつて、三浦しをんが「あやつられ文楽鑑賞」の中で、内蔵助のろくでなしぶりをさんざんに書きたてているのを読んで大笑いしたことがあります。でも、それは、三浦しおんの感性のなせるわざであり、忠臣蔵ファンも「わかっていない奴に笑われたって痛くも痒くもないもんね」と流せるでしょう。ところが、磯田先生は、史料に基づき、極めて客観的に内蔵助の「ふつうのおじさん」ぶりを淡々と明かしてしまっているので、忠臣蔵ファンは、ちょっとガッカリするか、もしくは、不愉快な気分に陥ってしまうかもしれません。
でも、磯田先生は決して、歴史のヒーローを貶めているわけではなく、歴史に名を残した人物への深く温かい敬意を持って、その人物の人間臭い一面を私たちに示してくれているのだと思います。
そして、「武士の家計簿」を読んだ時にも思ったのですが…日本の官僚制度のプロトタイプは江戸時代に出来上がっていた-ということを、改めて、認識しまた。もちろん、「だから、仕方ない」と現状を是認し続けてよいとは思いませんが、でも、「何もかも官僚が悪い」という議論では何も解決しないと思います。 江戸時代から脈々と続く、集団での意思決定の仕組みには、間違いなく日本人のメンタリティーが反映されているわけで、そこを冷静に分析することなくして、官僚制度の改革などできるはずもないのです。