おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「潜入捜査」 今野敏

2011年09月22日 | か行の作家

「潜入捜査」  今野敏著 実業之日本社文庫   

 

 マル暴刑事の佐伯は、暴力団組織を憎むあまり、度を超した逮捕劇を何度も何度も展開し、ついに「環境犯罪研究所」へ出向を命じられる。 刑事の身分を剥奪されて気落ちする佐伯だが… 実は、この研究所は、暴力団の資金源となっている不法投棄・産廃ビジネスを根絶やしにすることを目指して、警察以上にアグレッシブに暴力団と戦う組織だった。

 

 久々の今野敏。期待と共に読み始めたものの、「文章もこなれていないし、そもそも、やくざ業界の産廃ビジネスって、なんか古典的なテーマだなぁ」と思いながら読了。そして、著者あとがきを読んで、ようやく納得。なんと、1991年、20年も前の作品だったのでした。つまり、今野敏超初期作品だったのですね。こういう作品を経て、「隠蔽捜査」という傑作が生まれたのかと思うと、それはそれで味わい深い作品ではあります。

 

 ちなみに、佐伯は蘇我入鹿暗殺で功を立てた佐伯子麻呂の末裔。佐伯一族は、古代より宮廷警護などにあたった軍事氏族で独自の武術を継承しているという設定。私は警察小説しか読んだことがないけれど、武術小説は今野敏のもう一つの柱。正直なところ、佐伯の武術があまりに凄すぎて、リアリティが無くなってしまっている。拳銃を持って、4人、5人でかかってくる敵を相手に、パチンコ玉と手製の手裏剣で戦うって…なんとなく、ジャッキー・チェンの香港映画みたいだな。格闘技フリークの心には響くのかもしれないけれど、警察モノはリアリティを追求した方が面白いと思います。

 



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