「似せ者」 松井今朝子著 講談社文庫 (09/03/29読了)
一週間近くかかってようやく読了。江戸の芝居小屋に携わる人々を主人公にした短編集。
役者ばかりではなく、三味線方や興行の仕切り役である「お仕打ち」など裏方を主役級で登場させるあたり、いかにも歌舞伎の専門家である松井今朝子らしい作品。
表題作の「似せ者」は、当代の人気歌舞伎役者である坂田藤十郎のそっくりさんの物語。藤十郎が死んで芝居人気が低迷しているところに、興行師の与市が、田舎芝居で活躍していた藤十郎のそっくりさん桑名長五郎を連れてきて舞台に立たせると、大人気に。しかし、所詮、似せ者は似せ者。人気が長続きするはずもなく、与市も長五郎もそれぞれに挫折を味わう。
タイトルの「似せ者」は、そっくりさん・長五郎だけを指しているわけではないというのがミソ。名優・藤十郎の人生もまた、自分以外の誰かを演じる似せ者に過ぎなかった。いや、役者に限らず、誰もが、自らに与えられた役割を人生の中で、それらしく演じる似せ者なのではないか-。そんなふうに考えさせられる物語。
表題作に象徴されるように、舞台の華やかさとは裏腹に、芝居に携わる人々の諦念のようなものが作品全体を支配していて、ちょっと重たかった。そもそも、作品のジャンルが全く違うけれど、芝居をモチーフにしたものであるのならば、軽妙な拍子郎シリーズの方が圧倒的に好きです!
一週間近くかかってようやく読了。江戸の芝居小屋に携わる人々を主人公にした短編集。
役者ばかりではなく、三味線方や興行の仕切り役である「お仕打ち」など裏方を主役級で登場させるあたり、いかにも歌舞伎の専門家である松井今朝子らしい作品。
表題作の「似せ者」は、当代の人気歌舞伎役者である坂田藤十郎のそっくりさんの物語。藤十郎が死んで芝居人気が低迷しているところに、興行師の与市が、田舎芝居で活躍していた藤十郎のそっくりさん桑名長五郎を連れてきて舞台に立たせると、大人気に。しかし、所詮、似せ者は似せ者。人気が長続きするはずもなく、与市も長五郎もそれぞれに挫折を味わう。
タイトルの「似せ者」は、そっくりさん・長五郎だけを指しているわけではないというのがミソ。名優・藤十郎の人生もまた、自分以外の誰かを演じる似せ者に過ぎなかった。いや、役者に限らず、誰もが、自らに与えられた役割を人生の中で、それらしく演じる似せ者なのではないか-。そんなふうに考えさせられる物語。
表題作に象徴されるように、舞台の華やかさとは裏腹に、芝居に携わる人々の諦念のようなものが作品全体を支配していて、ちょっと重たかった。そもそも、作品のジャンルが全く違うけれど、芝居をモチーフにしたものであるのならば、軽妙な拍子郎シリーズの方が圧倒的に好きです!