おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

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「共喰い」 田中慎弥

2013年01月29日 | た行の作家

「共喰い」 田中慎弥著 集英社 

  「都知事閣下と東京都民のために貰っといてやる!」発言ですっかり有名になった芥川賞受賞作。

 強く昭和の匂いが漂う作品だなという印象。作者より少し若いのだけど、昭和30年代ぐらいに逆戻りした親の世代の物語ではないかと思うほど、重苦しく、貧しく、閉塞的な雰囲気が支配している。

  田舎の小さな町で、父と父の愛人と3人で暮らす少年。同じ生活圏に母親と父の買春相手もいて、父はその3カ所をフラフラと渡り歩いている。女性に対して暴力を繰り返す父親を嫌悪しながらも、心の中には自分も父親と同じ気質を持つのではないか、父親と同じことをやりたいのではないか…という恐れと好奇心が同居する。そして、ついには自分自身の彼女に対して暴力的な好意に及んでしまう。

 「共喰い」というタイトルの意味するところはあまりにもグロテスクで、物語の結末は、なんとも救いがない。

  現実問題として、DV男は掃いて捨てるほど(?)存在するのだろうし、そういう男に共依存することでしか生きていけない女性や、そういう父親のようにはなりたくないともがく少年もたくさんいるのだろうと思う。DVにまつわる家族間の傷害事件がニュースになることも珍しくないし、ましてや、小説の題材になるのも理解できるけど、それでも、やっぱり、救いがなさすぎるなぁ。

  「読書はひとときの現実逃避」と思っている私には、これでもかこれでもかと辛すぎる現実を突きつけられるような作品は正直、苦手な部類に入ります。やはり、芥川賞系よりも、直木賞系作品の方が私には合っているかも。

 高校を卒業後、就職もせず、バイトもせず、ただひたすら執筆活動を続けてきたという作者の執念は十分に伝わってくる作品でした。

 


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