おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ためらいもイエス」 山崎マキコ

2009年01月14日 | や行の作家
「ためらいもイエス」 山崎マキコ著 文春文庫 (09/01/14読了)

 帰りの東海道で読み始め、あまりの面白さに、危険を感じる。電車の中で「家に帰りついてダラダラと読み続けず、すぐにシャワーだ!」と決意し、その通りに実行するも、結局、シャワーをしたあと、ダラダラと読み続け、読了は04時05分。

 っていうぐらい面白いのに、なんか、タイトルはイマイチ。いかにも、思わせぶりな恋愛小説チックだ。そのうえ、表紙は、イマイチどころか、イマサンという感じがする。いかにも安っぽい。「100%、ジャケ買いはありえない」と断言できます。私は、参考にさせていただいている読書ブログで「読み出したら止まらない。主人公に応援旗を振りたくなる」と紹介されているのを見て購入しましたが、普通に本屋をブラブラしていても、絶対にアンテナにひっかからなかったと思う。「編集者さん、こんなに面白い小説なんだから、もっと売れるように演出しましょう!」と声を大にして言いたいです。

 主人公は三田村奈津美。28歳にして処女。「生き甲斐は仕事」のような生活は嫌いじゃない。結構、人生楽しく生きているつもりだ-ったハズなのに、ある日、突然、恋に落ちる。そして、28歳にして、忽然と、人生初のモテ期に突入し、どうしたらよいかわからず混乱する。これまでは、服装にも化粧にも無頓着だったけれど、ちゃんとしてみると、意外と美人とナイスバディであったことに気づく。漫画チックな展開だし、しっとりと味わい深い小説というわけではないのですが、とにかく、奈津美ちゃんカワイイです。初めての恋にオロオロしながらも、仕事に対しては妥協なしというか、恋なんかしちゃっている自分にカツをいれるため、修行のように仕事に励んでしまうところが、イジラしい。そして、単なる、恋愛物語というよりも、母娘の確執を乗り越えることができなかったから、今まで、恋ができなかった自分に向き合う、奈津美ちゃんの成長物語になっているのです。だから応援したくなっちゃうし、成長するのに遅すぎるなんてことはないんだと思える。奈津美ちゃん以外にもナイスキャラ多数登場。私のお気に入りは、ギンポという魚(江戸前の天ぷらネタらしい)に顔が似ているギンポくん(本名は神保さん)。なんともいえない変人オーラが滲み出していて心惹かれました。

結末の、無理やりなドラマチックエピソードは興醒めで、もうちょっと、肩の力を抜いたエンディングでよかったような気がしますが。でも、読み終わって、ちょっと前向きな気分になれる、気持ちの良いストーリーでした。


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