「日無坂」 安住洋子著 新潮社 (10/04/24読了)![](https://blogimg.goo.ne.jp/img_emoji/kitune.gif)
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江戸の薬種問屋の跡取り息子として生まれた利一郎。父親は、丁稚奉公から、物覚えの良さと、甲斐甲斐しい働きぶりで主人に可愛がられて番頭となり、入り婿へと引き立てられた真面目一筋の人間。舅が死に、自分が主人の身になっても婚家に気を使い、姑の顔色ばかりを窺っている。だから、利一郎にはことさらに厳しい。
そんな父親に対して利一郎は子どもの頃から小さな反発心を抱いていた。それは、「もっと愛されたい」「自分に目を向けてほしい」という思いの裏返しなのだが、その気持ちを素直に父親に伝えることもできないままに、少しずつ道をそれて、転落人生を歩んでしまう。ついには勘当され、家を追われる。
親子の関係というのは、江戸の昔も、今の時代も変わらないものなのだなぁと思わされる。
転落社会の中で生きていても、利一郎には、子どもの頃に厳しくしつけられ、たまに息抜きに訪ねた父方の祖父母に愛された記憶が身についている。本当の悪人になることなど決してできない。いつか、堅気の生活に戻りたい-と、もがく日々の中で、期せずして縁を切られたはずの父親と結ばれた糸が手繰り寄せられていく。
互いに不器用で、思いを上手く伝えられないがために、すれ違ってしまった父と子。実は、誰よりも思い合って、気遣い合っていたことを淡々とした筆致で描き出している。
十分すぎるほどに合格点。 ただ、以前(もう、かれこれ、1年ぐらい前かも)に、日経水曜夕刊で読んだ書評が、あまりにも絶賛モードだったので、少々、肩すかしをくらった感じではあります。個人的には、もっと、キャラクターをじっくりと書きこんで、重たいストーリーにしてもらいたいし、父と子を再び引き寄せる事件の描かれ方も、ちょっとあっさりしすぎているように感じました。
ただ、余白を残して、想像の余地を読者にたくさん与えるのが、この作家の個性なのかもしれないので…。今のところは、「松井今朝子の方が圧倒的に好きで、でも、安住洋子も悪くないかな」という感じ。最終評価はペンディング。
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江戸の薬種問屋の跡取り息子として生まれた利一郎。父親は、丁稚奉公から、物覚えの良さと、甲斐甲斐しい働きぶりで主人に可愛がられて番頭となり、入り婿へと引き立てられた真面目一筋の人間。舅が死に、自分が主人の身になっても婚家に気を使い、姑の顔色ばかりを窺っている。だから、利一郎にはことさらに厳しい。
そんな父親に対して利一郎は子どもの頃から小さな反発心を抱いていた。それは、「もっと愛されたい」「自分に目を向けてほしい」という思いの裏返しなのだが、その気持ちを素直に父親に伝えることもできないままに、少しずつ道をそれて、転落人生を歩んでしまう。ついには勘当され、家を追われる。
親子の関係というのは、江戸の昔も、今の時代も変わらないものなのだなぁと思わされる。
転落社会の中で生きていても、利一郎には、子どもの頃に厳しくしつけられ、たまに息抜きに訪ねた父方の祖父母に愛された記憶が身についている。本当の悪人になることなど決してできない。いつか、堅気の生活に戻りたい-と、もがく日々の中で、期せずして縁を切られたはずの父親と結ばれた糸が手繰り寄せられていく。
互いに不器用で、思いを上手く伝えられないがために、すれ違ってしまった父と子。実は、誰よりも思い合って、気遣い合っていたことを淡々とした筆致で描き出している。
十分すぎるほどに合格点。 ただ、以前(もう、かれこれ、1年ぐらい前かも)に、日経水曜夕刊で読んだ書評が、あまりにも絶賛モードだったので、少々、肩すかしをくらった感じではあります。個人的には、もっと、キャラクターをじっくりと書きこんで、重たいストーリーにしてもらいたいし、父と子を再び引き寄せる事件の描かれ方も、ちょっとあっさりしすぎているように感じました。
ただ、余白を残して、想像の余地を読者にたくさん与えるのが、この作家の個性なのかもしれないので…。今のところは、「松井今朝子の方が圧倒的に好きで、でも、安住洋子も悪くないかな」という感じ。最終評価はペンディング。