おりおん日記

電車に揺られて、会社への往き帰りの読書日記 & ミーハー文楽鑑賞記

「ラブコメ今昔」 有川浩

2010年08月29日 | あ行の作家
「ラブコメ今昔」  有川浩 角川書店 2010/08/25 

やっぱり、有川浩って上手いっ! ストーリーテラーとしての実力は相当高いところにあると思うけれど… でも、これだけの実力があっても、自衛隊モノ、軍事モノで直木賞は獲れないだろうなぁ。まぁ、本人は直木賞を獲るためではなく、自分が書きたいものを書いてハッピーであることを選んでいるのだろうけれど…。

 基本コンセプトは「クジラの彼」(7月読了分)と同じで、自衛隊員が主役の恋愛小説。ちょっと微笑ましく、ピンと張りつめた糸を緩められるような気持ちになれる。

 自衛隊モノ小説も、恋愛小説も、短編小説も、基本的には私好みではありません。でも、有川浩なら、私の好きでない3要素が合わさっていても、なぜか楽しいのです。

「孤宿の人」 宮部みゆき

2010年08月28日 | ま行の作家
「孤宿の人」上・下 宮部みゆき 新潮文庫  2010/08/19読了

 私の中では、宮部みゆきは「火車」があまりの最高傑作で、その後、長編も数冊読みましたが、どうも今一つ私の心に響かず、「火車で出し切っちゃった作家」と、勝手に思い込んでいました。

 でも、まだ、出しきっていなかったのですね。「孤宿の人」、淡々と静かだけど、池に波紋を広げていくように、心に響く小説でした。

 徳川11代将軍家斉公時代。四国の小国・丸海藩は、漁業と紅貝の色素を使った染物と、金毘羅詣でをする旅行者のための旅籠などで、小さいながらも、平和に、なんとか生計を立てて暮らしていた。そこに、妻子や部下を斬殺した元勘定奉行の加賀殿を預かることになったことから藩に巻き起こった騒動を描いた物語。

 ストーリー全体を通じて、「悪霊が存在するのでなはく、人間の恐怖や憎悪の心が悪霊を生み出すのである」という、若干、お説教的なテーマはともかくとして、ダブルヒロインである「ほう」「宇佐」という2人の少女がまっすぐに、強く、しなやかに描かれていることが、この小説の魅力の大半を担っているような印象でした。

 7月に飯嶋和一「黄金旅風」を読んでいなければ、もう少し、絶賛気分になっていたかもしれませんが…。 「黄金旅風」があまりにも凄すぎたので、その後の小説に対して、かなりカラクチぎみになっております。でも、宮部みゆきが長編の名手であることは納得致しました。

桂川連理柵 @ 内子座文楽

2010年08月24日 | 文楽のこと。
桂川連理柵 @ 内子座文楽(愛媛県内子町)

 ついに… 文楽のために本州の外に出てしまいました。我ながら、クレイジーと反省しつつ、でも「やっぱり文楽は私のエネルギー源♪」と幸せな気持ちになって帰ってきました。

地元のお大尽たちがお金を出し合って作ったという芝居小屋は、「大正ロマン」な雰囲気がそのままに残っていて、本当に、ステキ。ただ、観劇する環境は超過酷でした。小さなマス席に6人ギューギュー詰めで、足を延ばしたり、自由に動かしたりすることもできず…まるで修行のよう。舞台正面で人形はよ~く見えましたが…両端や最後列の2等席=椅子席が、ちょっとだけ羨ましくもありました。

私的に、内子座公演のMVPは桂川連理柵の前を語った呂勢さんです!! 呂勢さん、最近、聴くたびにどんどん魅力を増しているように思いますが、今公演では一段とノリノリで「もう、このまま最後まで語っちゃって!」と思うくらいの勢いがありました。「やっぱり、床の力って大きいなぁ」と改めて思いました。もちろん、勘十郎さまもステキでしたが、でも、今回に関しては、物語の世界に連れていってくれたのは呂勢さんです。

圧巻は、帯屋の乗っ取りを企む長右衛門の義理の弟・儀平が、しなのやの丁稚・長吉をおちょくり、馬鹿にして笑いが止まらなくなる場面。観客席も笑いにひっぱりこまれ、何度も何度も拍手が起こりました。きっと「笑い薬をやらせるなら、呂勢さんで!」という日がきっときっとやってくると確信しました。もちろん、清治さんの三味線も、相変わらず、清々しく、気持ちの良い音で、本当に最高でした。

それにしてしも、桂川は、あまりにも現代人からすると突っ込みどころ満載すぎるストーリー。だいたい文楽のチャラ男はロクデナシばかりだけれども、長右衛門はスジガネ入り。旅先で丁稚・長吉に言い寄られたお半が「おじさん、助けて~」と言ってきたのを、「すんごい眠かったので、深く考えずに布団に入れてかくまってやった」らしい。でも、眠かった割には、ちゃっかり致すことは致したというから恐れ入ります。

最後には「実は、昔、品川の女郎と心中しようとしたけれど、女が川に身を投げたのを見たら恐くなって逃げちゃったんだよね~」と大胆告白。 それって、現代なら、立派な保護責任者遺棄致死って罪状が付いて、逮捕されちゃいますよ!

そんでもって、「お半は、その女郎の生まれ変わりかもしれない。これも運命、今度こそは…」と心中を決意する。お半に義理だてするのはいいけれど、こんなバカ夫に自虐的に尽くしてくれた妻のお絹は、放っておいていいわけ??? 

お絹・和生さん、お半・清十郎さん。それぞれ重要な役どころのわりにイマイチ印象に残らず。実は、この演目って、ヒールの儀平・簑二郎さん、おとせ・勘寿さんの方がおいしい役どころだったのかもしれません。お二人とも大好演でした。

9月の東京公演では、勘十郎・長右衛門に簑助・お半。簑師匠のお半は、「子ども」であることを武器にしたあざとい女なんだろうなぁ…と勝手に妄想を膨らませます。

ところで、この演目とは関係ないのですが…舞台が始まる前の「演目紹介」は咲甫さんでした。ストーリーを理解しやすいようにあらすじをかいつまんで説明するのですが、イマイチ要領を得ず、取り立てて面白いわけではなく、パッとしない解説だなぁ~と思って聞いていました。

でも、後になって、その理由がわかりました。だって、咲甫さん、公演では出番ナシなのです、ただ、解説のためだけに、内子まで来ていたのです。いや、もちろん、師匠の浄瑠璃を聴くのも勉強のうちなのかもしれません。でも、咲甫さんと言えば、次世代を担うホープの一人なのに、こんな無駄な使い方、誰が考えるの? それに、同世代の呂勢にいい役がついて、あんなに活き活きと語っているのに、それを、指を加えてみていなきゃいけないのって、キツイと思います。私は、いずれ呂勢&咲甫時代が来ると思っているので(そのちょっと後には芳穂時代!)、こんなヒドイ待遇に、ちょっと、いたたまれない気分というか… かなり納得いか~ん!! と思いました。 




「七人の敵がいる」 加納朋子

2010年08月14日 | か行の作家
「七人の敵がいる」  加納朋子著  集英社(10/08/14読了)

 かなり、真剣に恐い小説です。「リアル・ホラーだ~」と思って読んでいたら、筆者ご自身が、あとがきで「ある意味ホラーです」とお書きになっていました。ある意味っていうか… 絶対的にホラーです。

 山田陽子。高学歴、高収入。背も高い。「3高」なばかりでなく、人からは高飛車で高慢と思われている。小学生の子どもを持つワーキングマザー。仕事は面白いし、それで給料をもらっている以上、中途半端なことはしたくない。ようやく子どもが保育園を卒園して小学生になったのだ。ますます仕事に集中出来る-と考えたのは大間違い。

 最初の父母会で「PTAの役員なんて、専業主婦の人がやれば…」と、ついつい本心を口走り、一挙にクラス中のママを敵に回す。四面楚歌でもなんでも、とにかくPTAを逃れればそれで万事よしかと思いきや… 学童保育の父母会役員、町内会の役員-津波のように面倒事が押し寄せてくる。いやいや、それだけではない、義母も、小姑も、夫も、会社の同僚だって、みんな敵なのだ。

最後は、一応、救いのある終わり方にはなっていました-。物語のテンポもいいし、中だるみするところで、意外なファクトを挟み込むなど、飽きさせない構成もめちゃめちゃ上手いなぁ-と思いました。でも、読みながら考えていたのは、「あまりにもリアルすぎて、子育てしながら働いている友だちには、絶対に薦めたくない一冊だ」ということです。ホント、そういう人にとっては、救いも無く、逃れようもない現実以外の何物でもない物語なのです。まぁ、子育ても家事も女の仕事と思いこんでいるような男性諸氏には、世の中がどれぐらい恐いところか、この入門書を読んで学んで頂くのもいいかもしれません。

「サバがマグロを産む日」 奥山文弥編

2010年08月14日 | あ行の作家
「サバがマグロを産む日」 奥山文弥編 つり人社 (10/08/13読了)

 へぇ~サバにマグロを産ませる研究なんてしている人がいるのか…!!! 世の中、知らないことだらけだよなぁ-と素朴に感動。
 
 マグロの漁獲制限のニュースになると、大抵、スーパーの魚売り場とか、回転寿司屋にいる客にインタビューして「えっ~。マグロ大好きだから、高くなったら困りますっ」というコメント撮るのが定番。私個人としては、そりゃあ、たまに極上のトロを食べると「旨っ!」と感動するけれど、日常的に食べたいぐらいの好物でもないし、困るってほどのこともないか…などと冷めていましたが、でも、「こんな夢のあるプロジェクトがあるならば、乗った!」という気分です。

 実際には、かなり難しげなこが書いてありましたが、突き詰めていえば、代理出産のようなものです。まだ、サバ×マグロは研究途上のようですが、既に、ヤマメ×ニジマスの組み合わせは成功すみ。ヤマメから産まれたニジマスは、遺伝子的にちゃんとニジマスで、次世代を産ませても、ちゃんと生粋のニジマスが生れてくるそうです。 で、マグロというのはサバと同じサバ科の魚(知らなかった!)だそうで、ヤマメ×ニジマスの技術を応用して、サバにマグロを産ませることはできるはずだ-と信じて研究中。

 サバ×マグロ研究の話だけを延々と紹介しているわけではありません。東京海洋大学(水産大学と商船大学が合併してできた学校)の無料開放講座「フィッシング・カレッジ」の講義内容の一部を紹介するもの。このフィッシング・カレッジというのが、なかなか、奥深い試みで、毎回、お魚関係の専門家(大学の名誉教授から、鈴廣蒲鉾社長、そして、さかなクンまで!)を呼んできて、素人にもわかりやすく、面白く、講義してもらう。しかも、聴講無料。

本の中で、専門家の先生が「食べ物として好きな魚、生物として好きな魚、魚との思い出」についてコメントしているのが、めちゃめちゃ楽しい。名誉教授も、最先端のバイオテクノロジーの研究者も、「好きなお魚」を聞かれると、ただの釣り好き少年に戻って、暑苦しいぐらいに熱く語ってしまうのです。魚食文化ニッポンの底の深さを感じる一冊でした。

「悪貨」 島田雅彦

2010年08月10日 | さ行の作家
「悪貨」 島田雅彦著 講談社 (10/08/09読了)

 私にとっては、初の島田雅彦作品。いかにも恬淡とした印象の文体が、この人の「味」なのだろうか? 正直なところ、文章はあまり私好みではないし、ストーリーとしてツメが甘いところもあるような気がするのですが… それでもなお、不思議な魅力と、不気味さに惹き込まれる作品です。

 社会への不満と、貨幣経済の在り方に疑問を抱いた日本人の若者が、中国人の犯罪組織の手先となり、中国で日本円の偽造を指揮する。高い技術を持つにも関わらず、正当に評価されていない紙漉き職人や印刷工をリクルートし、高性能の偽札鑑定機をもすり抜ける超精巧な偽札を400億円作る。

 最初、実験として100万円を東京の公演のホームレスに渡した時は、悪貨は、何人かの人生を狂わせただけだった。しかし、それが数百億円規模になると、ハイパーインフレを引き起こし、日本経済そのものを狂わせていく。

 では、もしも、日本経済を転覆させる目的で、国家ぐるみで偽札製造して、国家ぐるみでマネーロンダリングをしたとしたら…いったい、何が起こるんだろう-と、あながち、ありえなくもない想像をして、ちょっと薄ら寒い気持になる。

 ストーリーの中で、中国が日本の地方債を買いまくっていて、日本そのものを買収しようとしているという記述がありました。個人的には、あまり、おどろおどろしい陰謀説のようなものには肩入れしたくないけれど、2010年8月9日の日経夕刊のトップ記事の見出しは「日本国債購入、中国、上半期で1.7兆円」でした。もちろん、それは、欧米の金融市場が混乱する中で、日本が資金の逃避先になっているというだけのことなのですが(それに、日本の国債発行残高から見たら1.7兆なんて、はしたガネ)…みんながみんな日経の中身まで熟読しているわけでもなし、時代の流れをうまく取り入れた、アジテーション力のある物語だとは思います。

 なのに、「いやいや、警察の捜査って、そんなに、犯罪者に都合よく、特定のところにだけ抜け穴つくりませんから!」「海外送金で、自分が持ち込んだ紙幣そのものを、指定した団体に送るなんてことはできないでしょう!?」と突っ込み入れたくなるところ多数。もう少し、そういうところをツメれば、もっと読者の気持ちをかき乱せたかもね…と思います。あとは、人物描写というか…心情をじっくり描きこんで欲しかった。面白いけれど、中途半端に薄味な印象でした。

 この本で一番センスがいいなぁと思ったのは、本に挟み込まれていた栞。まさに、ストーリーにピッタリの「偽札風栞」なのです。もちろん、日銀や金融庁や警察庁から叱られない程度の偽札なのですが、最初に見た瞬間はハッとしました。



「幻海」 伊東潤

2010年08月08日 | あ行の作家
「幻海」 伊東潤著 光文社 (10/08/08読了)

 「活字の力が、3Dやバーチャル・リアリティなどといった体験型テクノロジーに勝ることを実証してみせようという高い志を掲げて挑みました」「活字の力で『アバター』に勝ちたいのです」。

作者の公式ウェブサイトにこう書かれていました。結構! 見上げた根性じゃないですか! ま、正直、『アバター』観てないので、それが、どれほど面白いのか知りませんが、個人的には、活字は3Dやバーチャル・リアリティに勝てる力は十分にあると思うのです。

しかし、この作品が『アバター』に勝っているかどうかは、かなり、微妙なような気がします。(すみません、『アバター』観ていませんが…)

布教のために長崎の町にやってきたイエズス会士のレンヴァルト・シサットは、布教活動の自由を求めて秀吉と直談判する。そこで、航海技術や天文学などの西欧文化を提供して豊臣軍の勢力拡大に協力することと引き換えに、布教の自由を保証しようと言われ、心ならずも、豊臣軍の戦いに加わる。

奥伊豆にあるとされる「黄金の国」攻略を目指しての海戦場面は、恐らく、他の作家がほとんど描いていない歴史だと思います。宗教が、いかにして戦争に加担することを正当化するのか-。無知蒙昧の民に布教するためにやってきたシサットが、日本独自の文化や、西欧の発想にはない航海術に心打たれるは興味深い。今は、のんびりとした(というよりも、やや廃れてしまった)伊豆をめぐって、こんな激しい戦いが展開され、そんな経緯で家康の手に渡ったのか…というのは、へぇ~、なるほどねぇ~という感じ。

かと言って手に汗握るような興奮とか、読み終わった後の充足感とかがあったか-と言うと、それほどでもない。「第一級の冒険海洋小説」と絶賛する気持ちにはなれなかったです。

読みながら「面白い小説の潜在力があるのに、なんで面白くないんだろう」とずっと考えていたのですが……私なりの結論は、「肩入れしたなる登場人物がいない」ということ。人物描写というかキャラ付けが甘くて、心底惚れたり、徹底的に憎たらしく思える人がいないのです。だから、ストーリーにのめり込めない。

 私的には「第一級の冒険海洋小説」の称号を与えるなら、圧倒的にこの前読んだ、飯嶋和一の「黄金旅風」です。

「ぼくの名はチェット」  スペンサー・クイン

2010年08月07日 | さ行の作家
「ぼくの名はチェット」 スペンサー・クイン著 東京創元社(10/08/06読了)

 20文字で要約すると-女子高生が誘拐されるライト・ミステリー。オリジナリティがあるのは… 事件解決を依頼された私立探偵バーニーが飼っている犬のチェットの目線で小説が展開されているということ。いや、失礼致しました。バーニーが飼っているわけではなくて、バーニーのビズネスパートナーのチェット目線で書かれているのです。

 このチェットが、憎からぬ奴でありまして、お利口で、カワイゲがあって、人生を楽しむ術を知っていて、しかも、なかなかの名推理(でも、ワンワンとしか言えないから、あまり役に立たないけど)。

 というわけで、最初は楽しく読んでいましたが… 後半は、かなり、飽きました。チェットというワンコを書きたいのか、ミステリーが書きたいのか、どっち??? という感じ。 ミステリーとしては、甘甘で、冗漫。学級文庫向き?


「日本振袖始」 夏休み文楽特別公演 @ 文楽劇場

2010年08月07日 | 文楽のこと。
日本振袖始  夏休み文楽特別公演@文楽劇場

 舞台は奥出雲、素戔鳴尊が八岐大蛇を退治する神話をベースとした作品。なんと、本公演では1883年以来の再演という、極めて珍しい作品。岩長姫・勘十郎さまに、素戔鳴尊・玉也さん。夏祭でヘトヘトなハズのお二人が最後の演目でも再び大立ち回りで、お疲れ様でございます。

 でも、ラブな勘十郎さま&玉也さんのことが気になってチラ見しつつも、私は完全に清治さんにくぎ付け。再演にあたっては、清治さんが補綴・補曲されていて、とにかく曲がめちゃめちゃカッコイイのです。文楽の配役は、基本的には大夫中心に決まっているので、人間国宝の清治さんが、意外に端場のチョイ役であることも多く、「もっと清治さん聞きたい~」とフラストレーションを感じることがしばしばなのですが、今回はたっぷり楽しめました。しかも、さすが、ご自分で作曲しただけあり、清治さんの魅力が存分に発揮されるようなエッジの効いた、勢いのある曲調。 若手の皆さんも、ビシッと揃っていて、カッコイイ!(最近、清治さんと清志郎さんが並んでいると、どうも親子に見えてしまうのは私だけ?) 大夫も三味線の勢いに負けずに、競い合い、響き合う感じ。特に、呂勢さん、咲甫さん、相子さんは、すごく近いところのネクスト・ジェネレーションとして清治親分に応えているように感じました。まさに、鶴澤清治プレゼンツ・ロックコンサート!!

 で、その洗練された床に比べると、舞台は、まだまだ、発展途上なのかもしれません。昨年のテンペストもそうでしたが、清治さんの才能輝き、床が勝ってしまっているのですが…ま、そもそも、大したストーリーがあるわけでもなし、たまにはこんな風に楽しむ作品があるのも悪くないです。ブラボ~ 清治さん!



「菅原伝授手習鑑」寺入り・寺子屋 @文楽劇場

2010年08月07日 | 文楽のこと。
寺子屋 夏休み文楽特別公演@文楽劇場

 本当は「なるべくネガティブなことは書かないようにしよう」と思っているのに、結局は、いつもヒドイことを書いている私。
 
 もともと夏休み公演をパスするつもりだったのは… 今年の相生座で拝見した寺子屋があまりにも素晴らし過ぎて、「この素晴らしい記憶に上書きされたくない」と思ったからです。

 そして、実際に、その通りでした。いや、取り立てて不出来というわけでもないと思うのですが、相生座で拝見した時のような、千代や松王の哀しみが客席まで激しく押し寄せてくる感じはなかったです。唯一の救いは、津駒さんと寛治師匠の床が素晴らしかったこと。

 毎度思うのですが…清二郎さんの「ハッ」「ヨッ」「ヤッ」とかいう、掛け声だか相の手は、ちょっとうるさすぎませんか? 頻度が多すぎる。その上に、大夫より声がデカい。と、そもそも、何のための相の手なのかがイマイチ、私にはよくわからない。なんか、ストーリーの流れとまったく関係なく、特に、場面が転換するようなところでもないような気がするんですよね。何人もの連れ弾きで、ビシッと合わせる必要があるでもなし…。それとも、自然と気合が入ってしまっているだけなのだろうか?寛治師匠にしろ、清治さんにしろ、本当に要所でしかお声を発していないと思うのですが…。

 文雀師匠の左は、人形だけでなく、師匠も動かさなきゃいけないんですね。段差があるところで、ひっぱりあげているのが見えちゃいました。