温泉クンの旅日記

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赤穂温泉(1) 兵庫・赤穂

2021-09-12 | 温泉エッセイ
  <赤穂温泉(1) 兵庫・赤穂>

「ふむ、なるほど。確かにしょっぱいな」

 

 浴槽に身体を沈めたまま、後ろをふと振り返るようなしぐさに隠して、左腕の上腕部に残る湯の雫を秘かにぺろりと味わう。残念ながら、湯口に飲泉カップが置かれているような源泉ではないし、湯船の湯を直接掬って飲泉するのも避けたいから、変則であるが雫で少量を味わったのだ。ただ、たしかに赤穂は塩味の温泉だけどあそこの温泉に比べればたいしたことないなとも思った。

 あそことは新潟の「越後長野温泉」のことで、海からはるか離れた山の中なのに、とても濃い塩の味がする湯であった。ああそうだ、飲泉だが、腎臓に疾患がある人が塩化物泉を飲泉するのは避けたほうがいい。

 

 赤穂温泉は古来(?)から「よみがえりの湯」として有名だそうで、ラドンを含んだ強塩泉で海水よりも多くのカルシウムを含んでいる。塩の温泉は熱の温泉でもあるので、保温・保湿効果のほかに美肌効果も高い。泉質は含弱放射能・カルシウム・ナトリウム・塩化物・強塩低温泉。
 温泉通を標榜しているのにわたしは「赤穂温泉」の存在を今年までまったくもって知らなかった。全国の温泉はざっと四千から五千の間、わたしが踏破したのがまだその半分たらずである。まあ、それもその筈で温泉の歴史はきわめて若く、昭和44年(1969年)に赤穂御崎で掘削されたが、湯量の減少で平成12年(2000年)に新しく源泉を掘削したのである。

 

「失礼しますよ」
 と声がかかって、浴槽に別な客が滑り込むように入ってきて、湯に波動が伝わってくる。
 越後長野の湯では、伝わってくる波動に、わたしの身体がぷかぷか浮き上がるほどの浮力が生まれて驚いたことを思いだす。それほど高濃度の塩分だったのだ。

 

 誰も入っていないのを確認して、露天風呂に移動した。狭いのでこちらは二人ぐらいが定員だろう。

 

 宿の名は「赤穂パークホテル」、到着時刻が読めなかったのと朝食が鑑識現場になる予感があって素泊まりにした。宿賃の七千円は、温泉があるところから手ごろといえる。ここの温泉「さつきの湯」というのだが、日帰り入浴も800円でやっている。

 

 

 播州赤穂駅の改札口を出て右に向かうと、隣接したビル「プラット赤穂」の二階にそのままつながっている。今日は素泊まりなので、軽くなにか食べていくことにした。

 

 

 みつけたのが、赤穂名産の塩をつかった名物の赤穂塩ラーメンを食べさせてくれる「赤穂ラーメン 麺坊」にきめた。
 赤穂の塩づくりは今から1800年前の弥生時代から始まった。1645年、浅野赤穂藩初代藩主浅野長直が大規模な塩田開発に乗り出し、以後300年にわたって入浜塩田の精算システムが主要な製塩法となる。現在でも国内の塩生産の20%を占める赤穂は塩の国なのである。

 カウンター席の他にテーブル席も30席くらいある、けっこう広いラーメン屋である。10席ほどあるカウンター席に坐り、メニューをみると、赤穂塩ラーメンは600円と手ごろな値段なので注文する。どうせホテルの近くのコンビニに朝食を買いにいくので、あとで腹が減ればその時不足分を調達すればいい。

 運ばれた丼の景色を眺めると、具は葱、もやし、メンマ、海苔、それに苦手のチャーシューがメチャ大きく幅を利かせている。とりあえず沈めちゃえ。

 

 思い切り澄みきったスープはあっさりしているが、少量味わってみると塩の旨みがしっかりある。出汁は鶏ガラと豚骨、昆布のようだ。

 

 腰がちょっと弱めの中細ストレート麺もスープによく絡む。
 底にまるごと残す予定だった苦手なチャーシューも、薄いだけあって軽い感じで食べきった。

 函館の塩ラーメンのほうが味としては完成度は高いが、スープも麺、両方とも熱々の提供(当たり前なんだけどね)だったので軍配をどちらにあげるかはなかなかに難しい。


  ― 続く ―

   →「越後長野温泉」の記事はこちら
   →「函館、滋養軒の塩ラーメン」の記事はこちら


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