上海餅 サービス・エリア

　高速道路の楽しみに、サービスエリアの上海餅（しゃんはいもち）がある。
　なにを隠そう、熱狂的なファンなのだ。腹がいっぱいでも一枚は必ず食ってしま
う。



　あるとき、道路公団（当時）がトチ狂ってサービスエリアから屋台を撤去して
しまったせいで、ひところより売られているサービスエリアが極端に少なくなった
のは寂しいかぎりである。
　ぱっと思い出せるのが東北道の蓮田、関越の高坂、東名の海老名、足柄、富士川
ぐらいか。ほかにもどこかあったらゼヒ教えてもらいたいものだ。

　子どものころ、と言っても中学くらいまでのことだが、町のあちこちにお好み焼
きを売っている店があった。どこも人気があった。旨いのはもちろん、とにかく
腹持ちがいいのである。

　子ども相手だから値段は似たようなものだったが、店によって味がちがう。ある
店は生地がうどん粉一本と紅しょうが味でなんどもひっくり返すからぺったんこの
薄さだったり、ある店は山芋がはいった黄色がかったふんわりと香ばしい生地に
キャベツたっぷり、またある店は鉄板に引いているかなり上等な油が生地にじんわ
り沁みこんでいたりして、それぞれに旨かった。小遣いをもらって、お好み焼きを
食べようと決めると、どこに行こうかそれなりに悩んだものだ。
（こんな悩み・・・って・・・いいねえ）

　お好み焼きのいいとこ取り、みたいなところが上海餅にはある。チヂミという
よりはお好み焼きに近い、とわたしは思う。値段も何回か上がったが現在280円。
煙草代よりは安い。

　上海餅の味を、食べたことのないひとに説明するときには、
「う～ん、餃子好きだったっけ。あ、そう好き。じゃあ、お好み焼きは好き？　
まあまあ好き・・・か。だったらそれを合体させたようなもの＜餃子味のお好み焼
き＞だから、きっとだいじょうぶだよ」

　熱いのがいいよ。

　それも、餃子と一緒で、焼きたての熱々のが一番おいしい。脂がじんわり沁みて
チョイ辛く、（運転手でなければ）冷えたビールとあわせれば最高だろう。わたし
の場合にはビールなど待ちきれずに、鼻息荒く、一気に食べ終わってしまうが。

　残念ながら、良心的な焼きたてが食べられるのはいまや東名高速の足柄サービス
エリアだけかもしれない。
　たいていは、一度火を通してから電熱ランプで保温しているガラスケースに収ま
っていたやつが売られている。
　まあ、それでも充分おいしいから、ついつい買ってしまう。