<温泉三昧の宿(2)>
「森のこだま」から外通路を通り、いったん棟に戻った。
設置してあるウォーターサーバーで水分補給をする。
(あれっ!)
眼の前に、きっと待ち合わせに使うのだろう、伝言板がある。
なるほど、温泉があちこちにあるこの宿ではとても便利かもしれない。ロビーで待つとか、大浴場にいく、とか家族連れなどには重宝な連絡手段である。
大浴場「甍(いらか)の湯」。
正面に三つの浴槽、左に回り込んだところに浴槽がもうふたつある。
吹き抜けになっていて、天井が高い。頭の上のほうから女性のくぐもった声がする。どうやら上階が女湯のようだ。
湯船によって温度が分かれているようだ。浴槽には玉石が敷きつめられている。
浴槽の温度をそれぞれたしかめて、ふたつ並んだ浴槽の奥のやつを選ぶ。
掛け湯をして身体を沈める。三畳ほどあるだろうか、一人で独占するのはとても贅沢で気分がいい。どうやら源泉が底から湧き出ているようだ。毎回、ここの浴槽をわたし専用にするとしよう。
この宿は七本の自家源泉を持っていて、湯量は毎分千六百リットルという。いくつも浴室を持ちながら館内の温泉暖房にも使えるはずだ。泉質は塩化物・硫酸塩泉だがとくに胃腸に効き目があるという。
エレベーターで一階にあがり、売店脇にあるエレベーターを使って「川3」のボタンを押す。この宿では「地下」を「川」という。だから地下三階(B3)は川三階(川3)という表示になるのだ。
「岩根の湯」である。
四万の源泉は、大岩が割れて湧きだしたという故事にまつわるのが、この岩根の湯だ。
タイル張りの浴槽に、天然保湿成分のメタケイ酸が多く含まれる。コラーゲンの生成を促進するので湯上り後の肌がしっとりする。そのため美肌の湯といわれる。
「月いでぬ 川に向かへる 岩根湯の 廊に裸の人の あまた立ち」
歌人の与謝野晶子も好んで入浴したといわれる。
いったん部屋に戻り身体を休め、夕食後にそのまま「御夢想(ごむそう)の湯」に向かった。
(この趣のある温泉の雰囲気・・・どこかで・・・)
うん、思いだした。たんげ温泉の「瀬音の湯」だ。
だが宿の歴史からいって、たんげ温泉のほうがここを参考にしたのに違いない。
この欄間のある、まるで湯小屋のような温泉の雰囲気、なんとも最高である。
この宿の温泉はとてもやばい。旅番組では「森のこだま」のシーンくらいしか使われないが他にもこんなにあったのか。入った温泉、どれもこれも気にいってしまった。
御夢想の湯から外に出たところに、庭園露天風呂「甌穴(おうけつ)の湯」があるのだが、この日の外気温が低すぎるので高血圧のわたしには危険である。
残念ながらパスしてしまったが、ちょっともったいなかったか。
― 続く ―
→「四万温泉 温泉三昧の宿(1)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(1)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(2)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(3)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(4)」の記事はこちら
「森のこだま」から外通路を通り、いったん棟に戻った。
設置してあるウォーターサーバーで水分補給をする。
(あれっ!)
眼の前に、きっと待ち合わせに使うのだろう、伝言板がある。
なるほど、温泉があちこちにあるこの宿ではとても便利かもしれない。ロビーで待つとか、大浴場にいく、とか家族連れなどには重宝な連絡手段である。
大浴場「甍(いらか)の湯」。
正面に三つの浴槽、左に回り込んだところに浴槽がもうふたつある。
吹き抜けになっていて、天井が高い。頭の上のほうから女性のくぐもった声がする。どうやら上階が女湯のようだ。
湯船によって温度が分かれているようだ。浴槽には玉石が敷きつめられている。
浴槽の温度をそれぞれたしかめて、ふたつ並んだ浴槽の奥のやつを選ぶ。
掛け湯をして身体を沈める。三畳ほどあるだろうか、一人で独占するのはとても贅沢で気分がいい。どうやら源泉が底から湧き出ているようだ。毎回、ここの浴槽をわたし専用にするとしよう。
この宿は七本の自家源泉を持っていて、湯量は毎分千六百リットルという。いくつも浴室を持ちながら館内の温泉暖房にも使えるはずだ。泉質は塩化物・硫酸塩泉だがとくに胃腸に効き目があるという。
エレベーターで一階にあがり、売店脇にあるエレベーターを使って「川3」のボタンを押す。この宿では「地下」を「川」という。だから地下三階(B3)は川三階(川3)という表示になるのだ。
「岩根の湯」である。
四万の源泉は、大岩が割れて湧きだしたという故事にまつわるのが、この岩根の湯だ。
タイル張りの浴槽に、天然保湿成分のメタケイ酸が多く含まれる。コラーゲンの生成を促進するので湯上り後の肌がしっとりする。そのため美肌の湯といわれる。
「月いでぬ 川に向かへる 岩根湯の 廊に裸の人の あまた立ち」
歌人の与謝野晶子も好んで入浴したといわれる。
いったん部屋に戻り身体を休め、夕食後にそのまま「御夢想(ごむそう)の湯」に向かった。
(この趣のある温泉の雰囲気・・・どこかで・・・)
うん、思いだした。たんげ温泉の「瀬音の湯」だ。
だが宿の歴史からいって、たんげ温泉のほうがここを参考にしたのに違いない。
この欄間のある、まるで湯小屋のような温泉の雰囲気、なんとも最高である。
この宿の温泉はとてもやばい。旅番組では「森のこだま」のシーンくらいしか使われないが他にもこんなにあったのか。入った温泉、どれもこれも気にいってしまった。
御夢想の湯から外に出たところに、庭園露天風呂「甌穴(おうけつ)の湯」があるのだが、この日の外気温が低すぎるので高血圧のわたしには危険である。
残念ながらパスしてしまったが、ちょっともったいなかったか。
― 続く ―
→「四万温泉 温泉三昧の宿(1)」の記事はこちら
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→「たんげ温泉(2)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(3)」の記事はこちら
→「たんげ温泉(4)」の記事はこちら
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