温泉クンの旅日記

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四万温泉 温泉三昧の宿(1)

2013-01-02 | 温泉エッセイ
  <温泉三昧の宿(1)>

 道路わきにはためく幟をみて、思わずアクセルから足をブレーキに踏み変え急激にスピードをゆるめた。



<この先! 凍結!! すべるぞ>
 とは、雪道走行が恐怖のわたしにとって、インパクトあり過ぎの幟である。
 たしかにそこから少し行くと雪が道路の半分ほどにカチカチ状態で残っていた。

 雪の残った温泉街の川沿いの細い路を慎重に抜け、橋を渡ってメインストリートに入ると、雪の量が多くなりますます緊張する。



 もうひとつ橋を渡り、急坂を駆けあがってなんとか無事に宿に到着。



 ここが、なんと室町時代に創業した、五百年の歴史ある宿「四万たむら」である。
「お疲れさまでございました。どうぞお車はそのままで、チェックインしてください」
 車を正面に着けると、半纏を着た係りひとがすっと現れ言ってくれた。さすが。

 温泉好きならとにかく一度は泊ってみたい宿だ。
 しかし由緒あるだけに、さすがにそれなりの宿賃だからわたしなどにはおいそれとは来られない。わたしも、ようやく安いプランをみつけ、ちびちび溜めたポイントもすべて使って今回初めて泊るのである。ざっと十年越しに夢がかなったのだ。
 日帰り入浴もやっているのだが、普通の二倍近い高めの料金設定なので敬遠していたのだった。

 フロントのある建物だけが古民家風だが、あとはすべて現代建築のホテルであった。



 ロビー階から、四万川の流れが屋外プールの向こう、はるか下のほうにみえた。



 案内された部屋は、フロント階の奥にあるエレベーターで一度上がって、またその階の奥のエレベーターでもう一階あがったところにあった。
 ドアを開けたところから部屋のなかまで丁度いい暖かさが迎えてくれた。実は全館、温泉を使った暖房なのである。
 お茶を供され、館内と避難口の案内、夕食の時間決めなどがひととおり終わり、部屋から仲居さんが消えた瞬間、着替えに慌ただしく取りかかる。
 まずは温泉、しかも一番に入りたい温泉があるのだ。

 浴衣にタオルを持つと、エレベーターをまた二つ使って一番下の階へ降りる。
 一番奥にある露天風呂「森のこだま」に小走りに向かう。



 脱衣所に入るやいなや、雑技団の早技ばりに一瞬で浴衣をかなぐり捨てて、タオルを引っ掴むと重い引き戸を一気に開けた。



(ここだここだ、温泉好きが憧れてやまないこの露天にやっとこれたぞ・・・)
 たっぷりの掛け湯をして、ことさらにゆっくりと身を沈めていく。



 西日本に、俗に三泊して三度朝を迎えれば難病も治るといわれるほど効能豊かな三朝温泉があるが、東日本にも四万温泉といって、その名の通り四万の病を治す霊泉があるのだ。
 今年の九月にようやく念願の三朝温泉に泊ったので、四万温泉で締めたいものだ・・・。
 それから三カ月、ついに四万たむらの露天風呂にいま入っているのだ。



 思ったとおりのいい湯に、満足を隠せずに頬がゆるむのであった。
 さてさて、これが温泉三昧の始まりである。


  ― 続く ―


  →「続・三朝温泉(1)」の記事はこちら
  →「続・三朝温泉(2)」の記事はこちら

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