温泉クンの旅日記

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由布院温泉(2)

2009-11-08 | 温泉エッセイ
  <由布院温泉(2)>

 貸切風呂は二つあった。
 どちらも、檜風呂と広い露天風呂があって同じつくりである。スペースがたっ
ぷり広いので、四人家族でもだいじょうぶそうである。



 由布院の温泉はランドマークである由布岳の恵みを受けて、その湧出量は全国
第二位とも第三位ともいわれるほどの豊富な湯量で、源泉の数も八百五十以上
あり、別府温泉に次いで全国第二位である。



 まずは檜風呂で、ゆっくりと由布院のお湯を楽しむ。やはりタイル張りの風呂
よりもこちらのほうが気分がいい。
 泉質は単純温泉で、柔らかく肌にやさしいので女性には特に人気があるのだ。



 続いて、広い露天風呂にはいった。
(うーむ、これはなんとも贅沢な露天だ・・・)
 温泉好きな男、つまりわたしには泉質自体にはさほど魅力を感じないのだが、
生まれたての湯量たっぷりの活力ある温泉に入れるのはこのうえなく贅沢で嬉し
いことだ。

 離れに戻ると、途中で買って持ち込んだ缶ビールを開ける。
 旨い。ビールは苦手だが、この旅先での一瞬はビール好きになってしまう。
 ビールから焼酎に切り替えてチビチビやっていると、そろそろ夕食の時間で
ある。

 案内された個室も、なかなかの雰囲気の部屋である。
 六名ほどが向き合って食事できるくらいの長いテーブルで、掘りごたつのよう
になっていて脚が楽に伸ばせた。



 目の前の壁の掛け軸やら、照明にも趣向が凝らされている。
 飲物のメニューをみて、冷酒を頼んだ。値段はびっくりするほど安い。



 運ばれてきた料理がものすごかった。
 まず器が凝っているし、盛り付けも実に洗練されている。
 吟味を尽くした素材を、本来の味を損なわないような絶妙な調理をほどこして
ある。



 熱いものは熱いうちに、冷たいものは冷たいうちに客に提供する。これが由布
院のすべての宿の基本姿勢だと思う。なかなかできないことだ。

 一村一品・・・そんな言葉をふと思いだす。
 わたしがその「一村一品」という言葉を知ったのは、やはり由布院の宿でだ
った。

 一村一品(いっそんいっぴん)運動は、1980年から大分県で始められた地域
振興運動で各市町村がそれぞれひとつの特産品を育てることにより、地域の活性
化を図った。当時の大分県知事である平松守彦氏により提唱されたそうだ。
 ということは、わたしは、1980年か1981年あたりに初めて由布院に来たのだ
ろう。



 由布市の一村一品はいちご、香りむらさき(ナス)、豊後牛、梨、いちご、
シイタケ、ニラ、夏秋トマト、ホウレンソウなどである。
 やがてこの運動は成功して、シイタケ、カボス、ハウスミカン、豊後牛、関
あじ、関さば、大分麦焼酎など全国に通用するブランドを生みだすことになる。
 この夕食にも、さりげなくこの一村一品のブランド素材がふんだんに使われて
いるに違いない。

 料理が続き、締めの釜飯は残すのはもったいないほど旨いので、やさしい仲居
さんに頼んで夜食用のおむすびに握ってもらった。



 帰りがけにギャラリーを鑑賞して、岩風呂に寄って帰った。やはり貸切風呂が
一番いいようだ。あとテント風呂というのもあるのだが、パスしておく。
 戻って、またしても焼酎を呑んでいるうちに、冷酒が効いたのか、あっという
まに眠りに落ちてしまった。

 贅沢な朝風呂を浴びて旅立ちの準備をすませると、そろそろ朝食の時間だ。
この時間に遅れたら問題である。なんのために時間を早めてもらったのかわから
なくなる。

 夕食と同じ仲居さんに案内されたのは、昨日の個室の隣の部屋であった。
 調度が違う部屋に案内したのは、たぶん配慮であろう。
 朝食も申し分なくすばらしいものであった。



 というより、申し訳なくなってしまったのである。
 昨日のチェックインのとき、朝食時間を早めるのに躊躇があった理由が、食べ
てみてわかったのである。
 手抜きいっさいなしの朝食を、作り立て焼き立ての最高の状態で食べてもらう
ためには、厨房のスタッフの複数名がわたしのせいで、いつもよりきっと早出し
たはずである。

「とてもおいしい朝食でした。朝食時間を早めていただいて、本当にありがとう
ございました。お陰で早めに出発できて助かりました」
 チェックアウトで精算するときに、わたしは心からお礼をいった。
 形ばかりの礼でない、と通じたのか、「重役」支配人の顔にも素の笑みがぽっ
かり浮かんだのである。

 ああ、つくづく思う。
 由布院というところは裏切られないところである。


  →「由布院温泉(1)」の記事はこちら

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