温泉クンの旅日記

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由布院温泉(1)

2009-11-04 | 温泉エッセイ
  <由布院温泉(1)>

 今回の九州旅の宿泊は、ほとんどB&Bか素泊まりで出費を抑えた。二食付きは
黒川と由布院だけである。



 その宿は由布院駅から車で五分ほどの距離だった。



 ホテル遊輪・・・玄関のイメージは、なんとなく旅館とか宿というよりフレ
ンチ・レストランといった趣である。世界的に高名な画家でオーナーでもある吉井
好子氏が手がけた宿らしいともいえる。もっとも現代洋画界には不案内なので
よくはわからないが。

 はいった突き当たりがフロントである。



 フロントの左手にはギャラリーがあった。



 右手の方向にはゆったりとしたロビースペースで、バーカウンターもあった。
大きな油絵がいくつか架けられている。
 
「夕食は・・・時でよろしいでしょうか」
 チェックインのための用紙に住所氏名を書き込み終わると、フロントの向こう
の品の良い年配の紳士が訊いた。きっと支配人なのであろう。どこかの会社の
重役といっていいほど貫禄があり恰幅がいい。
 どちらかといえばわたしは細身のほうだから、フロントを挟んで一見どちらが
客かわからないほどである。

 知らないうちに執事のような男性が、風のように現れてわたしの脇に控えてい
て驚かされる。こちらはディズニーランドのダンサーばりの満面の笑顔を絶やさ
ない。物腰からすると、オークラとかの一流ホテルにでもいたのだろうか。

「はい、それでけっこうです」
 満足げに重役は微笑を浮かべて頷く。わたしは夕食付きで泊まるときには、
たいてい宿の都合に合わせるほうだ。
「明日の朝食ですが・・・時でよろしいでしょうか」

「あのぉ、もうすこし早くなりませんか」
 重役の微笑が部分的に毀れて、ちょっと引きつったが、これはわたしも譲れな
いところである。横浜まで帰るので、明日は一気に岡山あたりまでは戻らねばな
らない。

「早く、とはどれくらいでしょうか」
「できる限り」
 微笑が消えて三割ていどの困惑が交じり合った顔になって、沈思の態勢にはい
った。

(え! そんなにわたしは法外な無理を言ってしまったのだろうか・・・)
 こちらが戸惑ってしまう。このホテルでは食事開始時間は鉄の掟で、破った客
はそれなりの罰でも受けるのだろうか。まさか、ね。

 緊迫の時が過ぎて、
「では、三十分早める、ということでいかがでございましょうか」
 最大限、特別の譲歩であって、どうあってもこの条件を呑んでもらいます、と
声にも静かな気迫がこもっていた。

「ありがとうございます。ではそれでお願いします」
 鉄の掟ならしょうがない、そうあきらめかかっていたわたしにとっては二つ
返事みたいなものだった。それに、「もうひと声!」なんていう雰囲気ではまる
でない。


 
 満面笑顔の執事に案内されたのは、棟割の新築の離れであった。
 広い玄関は共有スペースで、右側がわたしの部屋だった。
 あがったところに、安楽椅子みたいなのが置いてあり、その横に二間続きの
和室。



 外には、露天風呂があった。狭いがひとりには充分な広さである。



 なんと贅沢なと思うかもしれないが、この宿の何周年記念とかの特別割引で、
実は驚くほど安いのだ。
 一服してから大浴場に向かう。



 広い脱衣場である。
 掃除がいきとどいており鏡もきれいなものだ。脱衣籠が可愛い。



 調光に凝った大浴場でとりあえず旅の汗だけ流すと、そのまま貸切風呂を試す
ことにした。

   ― 続く ―
  →「由布院(1)」の記事はこちら

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