老爺の朝の即興詩 その3 「柱時計」
/時間なんてほんとうはないのに、ですなあ、部屋の柱時計はむきになって時を打つ/
/するとそこに、時間が歩き出すんであります。ことことこと、ステッキを突いて/
/過去も未来もなくてあるのは現在だけなのに。柱時計はそれではつまらないと言うんであります/
/区切りをつけた方が生きる張り合いが出て来るじゃないかと強弁して退きません/
/のっぺらぼうの平板に時を刻む。ぎざぎざに刻む。こうしておけば、触覚で時間に触れるらしい/
/時間なんてほんとうはない。ないのに、あるとしている。詭弁するのは柱時計/賢者を装うのが巧いので/
/この強弁詭弁のお陰で老爺は、しかし、髪が真っ白になった。巧みに乗せられているのだ/
/区切りに区切られていると、そこにある種の運動が働いて来るような錯覚がするんであります/
/この部屋の老爺は、時計と二人でそれに酔うのだ。ありもしないのをあると言い張って。死に魅せられて/
/ボーンボーンボーン。おやもうお昼の3時だ。おやつの時間だといって出て来るのは珈琲とお煎餅。どうなっていることやら/
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