即興詩 その4 「雪原」
ああもう死んでももいいなあと思うことがあります。ひょいひょいあります。果てしがないのです。歩いて歩いているのですが、雪原はいっこうに先が見えてきません。歩きを止めたら、体が冷えていっきょに睡魔が襲って来るはずです。それにまかせておけば楽々と死んで行けるはずです。猛吹雪が起こって目蓋を隠してしまいます。目蓋を開けたところで、おそらく何も見えないでしょう。よろよろ歩き続けます。歩き続けることに、果たしてどんな意味があるのでしょう。老爺の足はふっと止まります。疲労が彼の脳裏に快感ホルモンを大量に分泌させます。老爺は熊になります。どしんとそこに倒れて動かなくなります。ああもう死んでもいいなあともう一度老爺はそう言います。
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