おばかさんでいていいんだよね。おばかさんなんだから。
そうでありながら、そこに目をつぶって、賢いふりをする。
おばかさんなんかじゃない、という顔をする。したくなる。
で、そういうふうに、振る舞ってしまう。
そこが第一おばかさんなんだけど。
そしていざ現実、賢い生き方ができないで、落ち込む、苦しがる。吐息する。
「ふり」が保たないのだ。すぐに馬脚が現れてしまう。
賢者のふりをするのは苦労だ。「ふり」が成り立たないでストレスが溜まる。
そして疲れて、「おばかさんでいいんだよ、いいんだよ」と宥（なだ）めることになる。
そうやってやっと落ち着きを取り戻す。
その細道を行ったり来たりする。懲りないでやはり行ったり来たりする。へとへとになる。吐息が深くなる。
厄介な話じゃないか。
☆
賢者のふりをしないでも、おばかさんのままでも、月は月、星は星なのに。春の空は春の空なのに。
今日から大型連休が始まる。といっても、予定はない。
日が射せば畑に出る。畑仕事をする。これでいい。
捻挫の足先、甲の痛みはまだ続いている。
その上、このところ腰痛にも悩まされるようになった。
泣き面に蜂だ。
家の中にいても杖が欠かせない。倒れそうだ。倒れたら、支えきれない。
そのためには、障害者用の杖に支えてもらうしかない。
腰をかがめながら、こっちんかっちん音を立てて歩く。
畑仕事は無理だ。無理だけで出ていたい。お風呂用の丸椅子に座って、作業をするしかない。
作業は捗らない。仕方がない。外にいさえすればストレス解消になる。
風が強いなあ。春の嵐だ。
夜明け方から降っていた雨はいまは止んでいる。
空が重たい。被さってきている。寒い。
畑の人参が風に押し倒されて、起き上がって来られないでいる。
風の音が凄い。炬燵に足を延ばしながら、聴くともなしにそれを聞いている。
文句を言わないようにしようね。不平を言わないようにしようね。逆恨みしないようにしようね。
今日までを生かされてきたんだから。
これまで大切にしてもらったことを忘れないようにしようね。
何が起きても、それを恨みにしないように。
うん、地球に住んで太陽も星も月も見てきたんだからね。
美しい大空と美しい海と山とを見てきたんだからね。
消えて行くときにはすうういと消えて行こうね。有り難う有り難うを言いながら。
