抱かれたいおんなの人を過ぎて行く風にでもいい夏の日の落つ
僕の短歌。落選の。
老いているのにこうだ。まだ抱かれたがっている。母性を持つおんなの人に。
☆
母がわたしを抱いたのは3歳までだった。弟が生まれた。それからはずっと母に抱かれることはなかった。
夏の日が落ちて行く。暑かった。暑い風が吹いた。さみしい。蒸すようなさみしさだ。
☆
過ぎて行ったおんなの人が、ふっと泰山朴の花の、白い香に薫った。背後の渦巻きの風が、母になってわたしを抱いてくれそうな気がした。