今、文句はあるか。
文句はございません。
*
今、不平はあるか。
不平はございません。
*
では、これからどうなろうとも文句も不平もないのだな。
いえ。
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さぶろうは煮え切らなかった。煮え切らない返事しかできなかった。頭(かぶり)を振った。
これで前言が取り消された格好になった。さぶろうはこれを恥じた。仏道の修行は成っていなかったのである。見せかけだけだったのである。装っていただけだったのである。
地獄行きには文句があったのである。不平があったのである。それくらいの浅さだったのである。