ぬえの能楽通信blog

能楽師ぬえが能の情報を発信するブログです。開設16周年を迎えさせて頂きました!今後ともよろしくお願い申し上げます~

博多紀行。ここで会ったが千年目!!

2006-08-24 01:11:38 | 能楽
話が少しズレましたが、博多の結婚式のつづき。

鏡割りで始まり、能楽師の「四海波」の連吟、と続いた結婚式も、あとは ぬえが知っている通りのオーソドックスな式次でした。お色直しがあってキャンドル点火があって。。あれ? そういえばケーキカットはなかったな。

ともあれ順調に披露宴は進んでゆき、すでに祝宴もお開きになろうとしたところで、新郎側・新婦側からそれぞれご挨拶がありました。これも東京で普通に見るのはどちらか一方の側だけが挨拶をするのだと思いますが、博多ではこういう形なのかしらん。

さて挨拶が済んだのですが、ここで祝宴の最後を飾る独特の締めくくりがあるのでした。いわく『博多祝い歌』と『博多手一本』。へぇぇぇ~~これは知らないや。

『博多祝い歌』は「祝いめでたの若松さまよ、若松さまよ、枝も栄ゆりゃ葉も茂る」というような内容で、ははあ、この歌は有名だけれども、ぬえが知っているのと少し歌詞が違う。。おそらく地元以外の人たちによって広められたうちに歌詞が少し変わってしまったのでしょう。オリジナルを初めて聞いた。

そしてまた、『博多手一本』とは、締めくくりの一本締めなのですが。。ぜんぜん「一本」じゃないでやんの。(T.T) シャンシャン、シャンシャン、シャシャンシャン。え~~~?七回も手を打ってるんだけども。。

ま、これもともあれ、(^_^; 特記すべきはこの『博多祝い歌』『博多一本締め』の音頭を取る方がどうやら大変な名誉であるらしい事と、その音頭を取る方が司会に「○○流れの××様にお願い致します」と紹介されていたこと。「流れ」。。ははあ、これは ぬえも知ってる。「博多祇園山笠」の「山」の単位となる自治組織のことですよね!

ぬえは祇園山笠を実見したことはないのですが、ずっと以前に今回の新郎に櫛田神社を案内してもらって大体の様子だけは聞いていました。この祭では「山」と呼ばれる巨大な御輿を「流れ」ごとに担いで引くわけですが、なんといっても面白いのは、この祭のクライマックスの「追い山」。櫛田神社境内、および博多の市内を「山」が全力疾走するのです。テレビでもときどき放映されているし、同じように町内を山車が疾走する大阪・岸和田の「だんじり祭」なども有名でしょうが、この祇園山笠ではなんと!タイム計測が行われるんですよねえ。。

ちなみにこの新郎は、内弟子修行のために東京に出てきたとき、東京のお祭りを初めて見て、「ワッショイ、ワッショイ」と威勢はよいのに、なぜかついだ御輿がまったく進まないのか大きな疑問だったそうです。(^◇^;)

なお「追い山」は祇園山笠の最終日、それも深夜(というか早朝)の午前5時頃からスタートします。そして、すべての行事が終わった朝、櫛田神社では喜多流の能楽師によって『鎮めの能』というのが恒例行事として演じられるのだそうです(実際の演目は居囃子と舞囃子、とのこと)。

ふうん。。結婚披露宴の仕上げに『博多祝い歌』『博多手一本』の音頭を取る方は「流れ」の代表として重要な使命と誇りを持って会場にいらっしゃるんですね。

【今日のお題】

マリンワールド海の中道で、水槽の前に陣取ってようやく撮った貴重な一枚。
赤い魚は「アツモリウオ」、茶色くて地味な魚は「クマガイウオ」と言うんですって!もちろん『平家物語』の挿話からの命名ですが、この水族館では2種をわざと同じ水槽に入れて飼っていた。。
これはシャッターチャンスを待つしかあるまい。。
で、撮れました。一ノ谷合戦の再現図。。「返させ給へ、返させ給へ」と熊谷次郎が敦盛を呼び止めているところ。