なんだか忙しい3月で、ブログの更新もままなりません~。来週になればちょっとひと息つけますけれど。
さて扇の話の続きです。
無紅鬘扇の図柄は、秋草とだいたい相場が決まっている感があります。無紅ですから紅い花は描けない。。それで桔梗や薄、女郎花、菊、撫子などの秋草が選ばれて描かれるのでしょう。なるほど、春と違って秋にはあまり紅い花は咲きませんね。萩と彼岸花。。撫子にも紅はありましたっけ。彼岸花は毒草ですしあまり扇などの図柄には似合わないと思いますが、ともあれ、こういう淋しい寒色の花が秋には多いから、褄紺の無紅鬘扇には秋草が描かれるのでしょう。
ところが、無紅鬘扇を持つシテが登場する能が、必ずしも秋の季節を舞台とする曲ばかりではないのです。たとえば『桜川』。狂女能であるこの曲は、本来狂女扇を持つはずでもありましょうが、どうも無紅狂女扇の厳しい図柄があまりこの能に映えないからか、無紅鬘扇を使う事も多いと思います。もっともこの曲の前シテではまだ我が子を失う前の場面ですので、狂女扇ではなく無紅鬘扇を使うことに最初から決められています。
しかし、『桜川』は曲名からもわかるように、桜の盛りの春の季節が舞台の背景なのです。う~ん、これは困った。この矛盾をどう解決するべきか。。
おそらく、能楽師はそれぞれのお家ごとに工夫をされておられるのでしょう。季節違いは承知の上で、それに代わる適当な扇がないために秋草を描いた無紅鬘扇をそのままに使っている場合もあるでしょうし(実際のところ、見所からの遠目ではそれほど扇の図柄までは見分けられないですし。。)、あるいは桔梗などの濃い紫色の花を避けて白い秋草を集めた図の扇を作る場合もあるでしょう。
ぬえの師家にも、淡い褄紺に、秋草もそれほど目立たぬように、小さく細かく描かれた扇があります。子どもを失って狂乱しながら諸国を巡る、という深刻な内容(しかも『桜川』のシテは我が子を求めて筑紫国から常陸国にまで至る、という、現行曲中でも最も長距離の旅をする人物なのです)に似合わず『桜川』という曲には春爛漫の明るさがあります。この淡い無紅の扇はこの『桜川』や『弱法師』によく似合うと思いますね~。
ところで扇屋さんの十松屋さんのパンフレットを見てみたら。。ははあ、無紅鬘扇でありながら、吉野山の桜を描いた扇などもあるのですね。桜を白く描くことによって、紅入にならないように工夫してある。また、ぬえの師家にはありませんが、扇の面を紺で上下に区切って二段として、その上下の段にそれぞれ細かく秋草を描いた扇もあるようです。これなんか、ちょっとキツイ印象もあるので、狂女扇として使うこともできるでしょうね。
さて扇について長くお話して参りましたが、まだまだ語り尽くせない事も多いです。『善知鳥扇』や『阿漕扇』、『融扇』『山姥扇』のように、定められた1曲だけにしか使われない扇がある一方、『海士』の後シテはなぜ「童扇」を使うのか。。などなど、ぬえもまだ未調査で、理由がわからないことも多いように思います。装束や面と比べると、扇についての考察にはまだまだ目が向けられていないのが現状でもあるでしょう。
ぬえも今後も調べていきたいと考えていますが、今回のところはこれにて扇のお話を一段落させて頂きたいと思います~ m(__)m
さて扇の話の続きです。
無紅鬘扇の図柄は、秋草とだいたい相場が決まっている感があります。無紅ですから紅い花は描けない。。それで桔梗や薄、女郎花、菊、撫子などの秋草が選ばれて描かれるのでしょう。なるほど、春と違って秋にはあまり紅い花は咲きませんね。萩と彼岸花。。撫子にも紅はありましたっけ。彼岸花は毒草ですしあまり扇などの図柄には似合わないと思いますが、ともあれ、こういう淋しい寒色の花が秋には多いから、褄紺の無紅鬘扇には秋草が描かれるのでしょう。
ところが、無紅鬘扇を持つシテが登場する能が、必ずしも秋の季節を舞台とする曲ばかりではないのです。たとえば『桜川』。狂女能であるこの曲は、本来狂女扇を持つはずでもありましょうが、どうも無紅狂女扇の厳しい図柄があまりこの能に映えないからか、無紅鬘扇を使う事も多いと思います。もっともこの曲の前シテではまだ我が子を失う前の場面ですので、狂女扇ではなく無紅鬘扇を使うことに最初から決められています。
しかし、『桜川』は曲名からもわかるように、桜の盛りの春の季節が舞台の背景なのです。う~ん、これは困った。この矛盾をどう解決するべきか。。
おそらく、能楽師はそれぞれのお家ごとに工夫をされておられるのでしょう。季節違いは承知の上で、それに代わる適当な扇がないために秋草を描いた無紅鬘扇をそのままに使っている場合もあるでしょうし(実際のところ、見所からの遠目ではそれほど扇の図柄までは見分けられないですし。。)、あるいは桔梗などの濃い紫色の花を避けて白い秋草を集めた図の扇を作る場合もあるでしょう。
ぬえの師家にも、淡い褄紺に、秋草もそれほど目立たぬように、小さく細かく描かれた扇があります。子どもを失って狂乱しながら諸国を巡る、という深刻な内容(しかも『桜川』のシテは我が子を求めて筑紫国から常陸国にまで至る、という、現行曲中でも最も長距離の旅をする人物なのです)に似合わず『桜川』という曲には春爛漫の明るさがあります。この淡い無紅の扇はこの『桜川』や『弱法師』によく似合うと思いますね~。
ところで扇屋さんの十松屋さんのパンフレットを見てみたら。。ははあ、無紅鬘扇でありながら、吉野山の桜を描いた扇などもあるのですね。桜を白く描くことによって、紅入にならないように工夫してある。また、ぬえの師家にはありませんが、扇の面を紺で上下に区切って二段として、その上下の段にそれぞれ細かく秋草を描いた扇もあるようです。これなんか、ちょっとキツイ印象もあるので、狂女扇として使うこともできるでしょうね。
さて扇について長くお話して参りましたが、まだまだ語り尽くせない事も多いです。『善知鳥扇』や『阿漕扇』、『融扇』『山姥扇』のように、定められた1曲だけにしか使われない扇がある一方、『海士』の後シテはなぜ「童扇」を使うのか。。などなど、ぬえもまだ未調査で、理由がわからないことも多いように思います。装束や面と比べると、扇についての考察にはまだまだ目が向けられていないのが現状でもあるでしょう。
ぬえも今後も調べていきたいと考えていますが、今回のところはこれにて扇のお話を一段落させて頂きたいと思います~ m(__)m